前回と前々回は相手の発言を受けてそこからさらに話しを続けていくときに用いられる語句を取り上げました。今回は話し手自身の話のなかで話題をつないでいく語句で、knowが含まれるものを考えてみます。
会話でよく耳にする語句にyou knowがあります。この言い回しの語義については第2回で言及したことがありますが、新しい話題を述べる際に前もって付加する用法があります。本辞典からの引用です。
1 〈新しい話題を持ち出して〉ところで, あのね: You know, I worked in London before I came here. ところで, 私はここに来る前はロンドンで働いていたんですよ.
このyou knowはもともとas you knowから発展したもので(本辞典as you knowの項も参照してください)、これから言うことの前置き表現として用いられ、「知っているとは思いますが」というぐらいのニュアンスがあります。すなわち、古い情報であるかもしれないという但し書きとして、自分の意見、主張を強要しないという控えめな含みがあります。この語句を使うと、新しい情報を述べるときも直接上から目線で伝えるのでなく、クッションのような働きが出てきます。
この基本的なyou knowからさらに疑問文の形式で新しい情報を導入したり、転換する用法があります。次はそれぞれ本辞典の(Do)you know what? とYou know something [what]? の項からの引用です。(この2項目は記述に重複するところがありました)
1 〈新しい話題の前置きとして〉いいかい, あのねえ: (Do) you know what? I think it’s time we should stop working and have something to eat. ねえ, そろそろ仕事を中断して, 何か食べましょうよ // 《冷蔵庫の中をのぞいた後》 “You know what?” “No, what?” “I think this milk is spoiled.” 「ねえ, ちょっと」「何? どうしたの?」「この牛乳悪くなってるよ」.
1 〈相手の注目を引いて〉ところで, ねえちょっと: You know something? I think I can smell something burning. ねえちょっと, 何かこげているにおいがするみたいだよ.
2 〈話題を切り換えて〉ところで: You know what? I’d better pass on the game. I have to go home. ところで, 僕はもうゲームをやめるよ. 家に帰らなきゃならないんだ.
このとき、疑問文への応答が挿入されることがあり、その場合、上の1の第2例のように、相手からの合いの手という形をとるのが普通です。ここで「知ってる」と言ってしまっては話の腰を折ることになります。
また、Do you know what? を通常の疑問文の語順にして独立させた言い方もあります。特に、びっくりするような話題を述べるときに用いられます。日本語の「ねえねえ、知ってる」のニュアンスに近いと言えるでしょう。
2 〈会話の切り出しとして〉ねえ, ちょっと聞いてよ(◆新しい情報を導入する): Hey! What do you know? I’ve hit the lucky number! ねえ, ねえ, 私宝くじに当たったのよ! / 《友だち同士の会話》 “What do you know? I got an A on my math test!” “Great! I knew you did it because you are a diligent student.” 「ちょっと聞いてよ. 私, 数学のテストでAを取ったのよ」「すごい! あなたはがんばり屋さんだからやると思っていたわよ」.
さらに、みかけはknowの目的語の形をとり、コンマで区切って、新しい情報を伝えることにも使われます。
3 〈打ち明け話の前に置いて〉実は…なんですよ: Do you know, I get the idea my boyfriend is seeing another girl. 実は, 彼がほかの女の子と浮気しているような気がするの// My friends gave this necklace to me. And do you know, I’ve worn it every day since. 友だちがみんなでこのネックレスを贈ってくれたの. それから毎日身につけているのよ, 実は.