前回は of course や certainly を中心に同意表現をみてきましたが、今回も同じように相手のことばに強く同意する表現を考えてみます。certainly とほぼ同義で用いられる語に absolutely があります。本辞典から引用します。
1 〈相手の発言に同意して〉まったくその通りです:“It was an excellent film.” “Absolutely!” 「とてもいい映画だったね」「まったく」 “How lovely it is today!” “Absolutely.” 「何といい天気なんでしょう!」「本当にね」.
2 〈意見を求められて〉そうですとも, もちろんです:“That’s a good idea, isn’t it?” “(Oh yes,) absolutely!” 「それはいい考えじゃありませんか?」「そうですとも」 “Do you like this music?” “Absolutely not!” 「この曲好きですか?」「とんでもない, 全然好きではありません」.
さらに、下囲いに類似表現の情報が書かれています。
(1) 類似表現として certainly や((英形式)) quite (so) などがあるが absolutely の方が強意的:“He’s a nice fellow.” “Certainly not [Quite so].” 「彼はいいやつだね」「とんでもない[いかにも]」 “Have you forgotten our anniversary?” “Certainly not!” 「結婚記念日のこと, 忘れてた?」「そんなことあるわけないだろ」.
(2) definitely は absolutely とほぼ同様に用いられる:“Are you coming?” “Definitely!” 「来ます?」「ええ, 絶対に行きます」 “Is there any chance of a discount?” “Definitely not!” 「まけてもらえない?」「無理でございます」.
それぞれの例にもありますが、3語とも‘Absolutely/Certainly/Definitely not.’のように not を伴っても使われます。このようなことから、absolutely と certainly、definitely の3語は同じように使われるようにみえますが、それは相手の意見や主張などに対して積極的に同意する表現として単独で用いられるときに限られます。また、頻度的には certainly の頻度が高く、あるコンピュータコーパスで語そのものの出現頻度を検索しますと、他の2語に比べおよそ60倍という数値が出てきます。
単独用法以外では、absolutely は certainly と definitely と異なる使われ方をします。すなわち、certainly と definitely は次のように同じ構文をとりますが、それらの代わりに absolutely は使うことは普通できません。
(a) He’ll certainly/definitely come.
また、-ly を取り除いた形容詞の形でも certain と definite は同様の振る舞いをしますが、absolute は同じ構文では生起しません。
(b) It is certain/definite that he will win.
(c) She is certain/definite that he will win.
certain は確信度、definite は確定度を表し、程度の差がうかがえますが、absolute は、absolute temperature(絶対温度)のように使われることからもわかりますように、もともと絶対的な値を表すのが基本であることがこのような差となっていると思われます。
副詞 absolutely は前文を受けて、‘Absolutely [not].’のように単独で使われると、相手の意見、主張に賛意ないし反対を強く表す程度副詞として働きます。それは「完全」を表す perfect も副詞 perfectly では程度副詞として用いられるのと同様です。ちなみに、absolutely は‘absolutely certain/definite’のように、 certain/definite を修飾できますが、逆に certainly ないし definitely は absolute を修飾できません。