皆さんは,紀貫之の『土佐日記』,もちろん知っていますね。今回は,その「土佐日記」になぞらえて,高知方言の拡張活用例のうち方言メッセージの例を紹介します。
10月に高知で開催された日本方言研究会で,この研究について発表しました。その滞在中に調査した例です。
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まず,文末表現の「~ぜよ」の付いた例が目立ちます。高知方言の代表と考えられていることが分かります。
高知空港に着きますと,三志士像(高知駅前:龍馬,武市半平太,中岡慎太郎)のパネルが出迎えます。「三志士像が待ちゆうぜよ」のメッセージが大きく書かれてあります【写真1】。空港ビル2階の「土佐メモリアルスクエア」の案内看板には,龍馬が「2階に、わしの土佐メモリアルスクエアもあるぜよ!! ぜひ見ていっとうせ」と案内しています【写真2】。
現在開催中の「志国高知 龍馬ふるさと博」の公式パンフレットの表紙にも「秋の高知はうまいぜよ!」と大きく書かれています【写真3】。
この「~ぜよ」に,坂本龍馬の名言「日本を今一度せんたくいたし申候」の「せんたく(洗濯)」を組み合わせた例もあります。
上の「龍馬ふるさと博」の幟では「心とからだのせんたくぜよ」【写真4】と,また,ミス高知大学の看板には「せんたくするなら国より美女ぜよ」と使われていました【写真5】。
また「~とおせ」の用いられた例も多くありました。上の空港の案内もそうですし,携帯端末による観光案内の宣伝【写真6】など,多くの例を認めました。ただし,高知大学の久野眞教授によりますと,この表現は,本来は目下の者に向かって「~ちょうだいな」と軽く願う意で,拡張活用例では目上に使うようになっているものが多く,本来用法からは外れているということです。
そして,2013年3月の完成を目指して,現在建て替え工事中の高知電気ビル本館の工事現場の防護壁には,高知方言メッセージの長いお話が描かれています【写真7】。すべて,土佐出身の歴史的人物の龍馬ふるさと博のキャラクターイラストに語らせています。
今回紹介した例は,偶然にも坂本龍馬が関連していましたが,高知方言の拡張活用例は,最近話題の“龍馬語”に限られてはいません。もちろん,龍馬と無関係のものも多くあります。念のため。