このカタカナ語、英語で言うと???

第1回 メール(1)

筆者:
2021年6月1日

カタカナ語、そのまま訳してだいじょうぶ?

カタカナ語は、そのまま英語にできるものもありますが、実は英語の意味からズレてしまっているものがたくさんあるのをご存じですか?

私は英会話講師をしています。毎日教えているなかで、しだいにあることがわかってきました。それは、生徒さんたちが間違える部分は、かなりの率で重なっているということです。そのなかでもみなさんが共通して間違えるものに、カタカナ語の一群がありました。いわゆる「和製英語」もそこに含まれますが、和製英語ではない、英語としてちゃんと存在している単語であるにもかかわらず、そのまま英語にしてしまうとおかしくなってしまうものがたくさんあるのです。

これらの単語をメモしていったら、あれよあれよという間にリストは膨れあがっていきました。意味や発音など、さまざまな観点から間違いやすいカタカナ語をピックアップしていくと、辞書にできそうなほどの数があります。この連載では、このリストのなかから、みなさんが特に間違えやすい単語をピックアップしてご紹介していきたいと思います。

メールはmail?

まずは、「メール」という語をみてみましょう。例えば「後でメールするね」を英語にしようとしたとき、多くの生徒さんが作る文は、だいたいこんな風です。

I will send mail later.

これは完全に間違った英文というわけではありませんが、どのように響くかというと、「あとで郵便物を送ります」といっているように聞こえます。そうなんです、「mail」という英単語は、基本的には、「(手紙や小包などの)郵便物」を指すのです。しかも、個々の葉書や小包のことではなく、集合的に「郵便」や「郵便物」を指す、数えられない名詞です。

“You’ve got mail.”というメールの着信音を聞いたことがある人もいると思います。これはそもそもは郵便屋さんが手紙を届けてくれるときに言う「郵便で〜す」の意味で、それが電子メールの着信音としても使われた、ということなのですね。

「電子メール」はなんという?

mailは広い意味では電子メールのことも含んでいるのですが、普通はメールのことは、e-mailと呼びます(ハイフンなしでemailとも)。e-mailは、集合的にメールのことを指すときは数えられない扱いになりますが、一通一通のメールを指すときは、数えられる名詞として使います。ですから、メールが1通ならan e-mail、2通以上ならe-mailsです。

sendがSVOO型の動詞だということも考え合わせると、「後でメールするね」は、

I will send you an e-mail later.

などというと、誤解なく伝わる文になります。

もうひとつ付け加えると、emailは動詞としての用法も持っています。「送る相手」を目的語にとる他動詞です。ですから、

I will e-mail you later.

のように言うと、短くすっきりとしてよいですね。I will mail you.と言ってしまうと、封書か葉書が届くのかな? と思われることもあるので注意が必要です。

カタカナ語だからといって

こんなふうに、英語由来のカタカナ語だからといって、そのまま英語にできるわけではないというのは、よくあることです。この連載では、そんなカタカナ語に焦点を当てて考えていきたいと思います。

そして、ただ単に違いを知るだけではなく、それが辞書にはどのように記述されているか、またデータ上ではそれらの違いがどのように見えるのか、といった点もご紹介したいと思っています。ですからこの連載は2回セットで、まずは初回でカタカナ語と英語の違いを知っていただき、その次の回では〈辞書でcheck!〉〈データでcheck!〉などの項目を設け、より詳しくお話しします。

そんなわけで、次回はmailという語を〈辞書でcheck!〉していきます。辞書を見るときのコツもあわせてお話ししますので、どうぞお楽しみに。

筆者プロフィール

武田 三輪 ( たけだ みわ)

日本語教育能力検定合格及び420時間の研修修了。外資系企業(ダイソン・ノキア等)で日本語教育に従事し、その後大手英会話スクールで日常会話、TOEIC800点コース、ビジネス英語等を担当。早稲田大学文学学術院博士後期課程中退。大学院では日本語学を修め、辞書についても研鑽を積んだ。現在はフリーランスの英会話講師として、日本語学の知識を活かした英文法、辞書指導に力を入れながら、話せるようになることに特化した指導をしている。
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編集部から

「日本語風の発音になってはいるけど、メールはmailでしょ」
では、そのまま英語として使えるのでしょうか。
もとの英語とカタカナ語との間にズレがあるもの、そもそも英語ではないもの、カタカナ語のなかにはいろいろあります。
発信が重視される昨今、このカタカナ語、英語で言うと……そんな疑問に答える連載です。