〈辞書でcheck!〉
前回、mailという語は基本的には「郵便物」を指しており、メールという日本語をそのままmailに置き換えることはできない、という話をしました。でも、このことは、じつはしっかり辞書をみると、解決できる問題なのです。今回は、辞書の読み解き方を、いっしょに見ていきましょう。
まずはmailから
まず、三省堂『ウィズダム英和辞典』のmailを見てみましょう。
辞書を引くときまず習慣にしたいのは、品詞のチェックです。mailは名詞だということを確認します。そしてさらに、mailというのは1通1通の手紙ではなく、郵便制度そのものや、不可算名詞として集合的に郵便物のことを指す、ということがちゃんと記述されていますね(可算名詞はC、不可算名詞はUの記号です)。これはきちんとした学習辞書であれば、必ず載っている情報です。訳語の「郵便物」「手紙類」という部分だけではなく、記号やカッコのなかにもぜひ注目してくださいね。
同じmailを、『ジーニアス英和辞典』でも見てみましょう。
書きかたは少しずつ違いますが、やはりmailは総体としての「郵便」を指す、数えられない名詞なのだということがわかると思います。
emailをチェック
続いてemailのほうも見てみましょう。前回emailには動詞の用法もあると書きましたが、辞書で見てみると、まず名詞としての記述があり、その下に動詞としての用法を見つけることができます。動詞部分は、『ウィズダム英和辞典』だとこんなふうです。
これは、短く書かれているだけに、じつはちょっと複雑です。まず[~A B/B to A/A with B]のところに注目してみてください。このカッコ内を読み解いてみましょう。これは、
の3種類の使い方ができますよ、という情報が、1つのカッコのなかに込められているということなのですね。そして、波線を引いたところを見ていただけるとわかるように、Aが〈人〉、Bが〈(情報などの)物〉です。ですから、「あなた〈人〉にそのデータ〈物〉をメールで送ります」と言いたい場合には、上のA、Bにそれぞれ〈人〉〈物〉を当てはめて、
のようにいうことができるということです。
また、煩雑さを避けるため線は引きませんでしたが、「電子メールを送る」という語釈の後に、《for》という前置詞が書いてあるのに気づきましたか? これは辞書を読むときのコツなのですが、同じ形のカッコ同士は対応している、というふうに読みます。つまり、emailの後ろに《for》が来る場合、文頭の、同じ《 》がついている《~を求めて》という意味になる、ということです。例えば、「彼はより多くの情報を得ようと、私にメールしてきた」と言いたいときには、He emailed me for more information.という使い方ができる、ということなのです。
『ジーニアス英和辞典』では、似たようなことがこのように表示されています。
ジーニアスでは、まず[1]で、emailは人・会社など、送る相手を目的語にとる他動詞である、とシンプルに表現されていますね。その下の[2]では、メールに何かを添付して送りたい場合には、SVOO型として、「人に」「物を」送信するという形がとれる、ということが記述されています。
このemailという項目では、ジーニアスよりウィズダムのほうがより詳しい文型が取り上げられていますね。でも、逆にジーニアスのほうが詳しい場合もありますし、同じ現象が異なる角度から説明されている場合もあります。いくつかの辞書を見比べてみると、同じ単語をさまざまな角度から見ることができますので、とってもおススメですよ!
辞書には、これ以外にもさまざまな情報が詰め込まれています。記号類やカッコの使いかたなどに慣れないとちょっと難しいこともあると思いますが、英和辞典には、自分で英文を作りたいと思ったときのヒントがいっぱいです。どんどん活用していきたいものです。
〈出典〉
- 三省堂『ウィズダム英和辞典 第4版』 iPhoneアプリ「辞書 by 物書堂」版 (2019)
- 大修館書店『ジーニアス英和辞典 第5版』 iPhoneアプリ「辞書 by 物書堂」版 (2017)