みなさんは、「アレンジってどういう意味?」と聞かれたら、なんと答えますか? 私だったら「なにかに少し手を加えること」「ちょっと改変すること」というふうに答えると思いますが、いかがでしょうか。アレンジということばは、
「子どもでも食べやすいレシピにアレンジする」
「現代風にアレンジされたシェイクスピア」
「この曲はアレンジがいいですね」
というように使いますね。
さて、ここでクイズです。下のarrangeの使い方のなかで、英語でも違和感なく使えるものは3つです。残りの3つはそうとはいえません。どれが英語として自然な使い方でしょうか?
A. arrange his design(彼のデザインをアレンジする)
B. arrange the story for children(ストーリーを子ども向けにアレンジする)
C. arrange a recipe(レシピをアレンジする)
D. arrange some flowers(花をアレンジする)
E. arrange the song for the piano(その曲をピアノ用にアレンジする)
F. arrange my hair(髪をアレンジする)
わかりましたか? ちょっと難しかったでしょうか。正解は……………後半の3つ、D、E、Fでした! flower、song、hairの3語は、コーパスと呼ばれる大きな言語データで見ても、よく見ることができる使い方です。その一方で、designやstory、recipeといったものにarrangeという動詞を使うことは、あまりないのです。それはなぜなのでしょうか。ひとつずつ確認してみましょう。
まず、英語のarrangeってどういう意味か知っていますか? 実はarrangeのいちばん根本にある意味は、「並べる」「整える」ということです。ですから、arrange some flowersのように、「きれいに並べる」というのがarrangeという語の最も基本の使い方だと考えるとよいでしょう。
「並べる」「整える」という意味合いから発展し、「手配する」「調整する」のように使われることもあります。英語のarrangeでもっとも使われる回数が多いのは この意味で、I will arrange the meeting.(私がその会議の手配をします)のように使います。
arrangeを「改変する」「手を加える」という意味で使うのは、圧倒的に「(音楽を)編曲する」の場合です。I arranged the tune for a jazz band.(その曲をジャズバンド用にアレンジした)というような場合ですね。しかし、音楽以外のジャンルでは、「改変する」という意味にとれる例は、あまりみられません。
日本語のアレンジは、冒頭に挙げたとおり、基本的に「改変する」という意味で、日本語コーパスで見ると、音楽以外にも「デザインを」「ストーリーを」「レシピを」アレンジする、という例は多いのですが、これをそのまま英語のarrangeにスライドさせて使っても、意味はうまく伝わらないかもしれません。arrangeという語を使おうとするよりも、
I added some Japanese flavor to the design.(デザインに日本風味を加えた)
The story was adapted for children.(そのストーリーは子ども向けに書き直されている)
I altered the recipe so I can cook it quickly.(時短になるようレシピを変えた)
といったように、くふうして表現するのがよいだろうと思います。なかなかむずかしいですね。まずは、arrangeの基本の意味は「並べる」「整える」「手配する」であって、「改変する」というわけではない、ということを覚えてください。
次回は、このアレンジという日本語とarrangeという英語を、データを使って見比べてみます。アレンジとarrangeの意味や用法の違いを、よりクリアに知っていただけるのではないかと思います。
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【お知らせ:7/6追記】
2021年9月4日 JACET英語辞書研究会にて、お話しする機会をいただきました。
英語の辞書指導に関心のある先生方、ぜひご参加ください。
https://sites.google.com/site/jacetlex/