前回、candyとsweetsが、アメリカとイギリスでそれぞれ何を指しているかについてお話ししました。今回は、「スイーツ」という語について、もう少し詳しくみていきましょう。
日本語でスイーツというと、主に洋菓子のことを指しますね。しかし、クッキーやサブレのような焼き菓子は、スイーツには含めないこともあると思います。ケーキやパイ、タルト、シュークリーム、プリンなど、多くは要冷蔵品で、クリームやフルーツがついているようなものが、典型的なスイーツなのではないでしょうか。パンケーキやワッフルなども、フルーツやクリームが添えられている場合、スイーツと呼ばれますね。
では、英語で「スイーツ」といいたいときには、なんといったらよいでしょうか。これはなかなかむずかしいところですが、そのものズバリを指す単語は、実はありません。
アメリカではsweetsというと、「甘いもの全般」を指すことができるので、たとえば「スイーツをもっていくね」と言いたいときに、I’ll bring some sweets to the party.のように言ってもまったく問題ないでしょう。デザートに食べられるような甘いものをもってくるのだろうな、と思ってもらえます。しかし、I like sweets.といったときは、日本のスイーツのようなケーキやプディングなどを指しているとは受けとめられず、candyも含めた、甘いもの全般を想像する人が多いのではないでしょうか。
イギリスでI like sweets.といったら、まずはチョコレートを含む砂糖菓子類が好きなのだ、ととられると思います。文脈にもよりますが、ケーキやタルトのようなお菓子を指している、とは思われない可能性が高いです。
また、イギリスでは、レストランでの食事のようなコースの中で出てくる甘いもののことも、sweetとかpudding(プディング以外のお菓子であっても)などと呼ぶことがあります。アメリカではふつうdessertと呼ばれるものですね。イギリスでは、文脈によってはsweetsは食後のデザートのことを指すのだということも、頭の片隅にいれておくとよいでしょう。
スイーツをそのまま指すことばはないので、私は具体的なお菓子の名前をいってしまうことも多いです。「スイーツをもっていくね」という代わりに「パイをもっていくね」とか「ケーキを買っていくわ」とか言ってしまうのです。これがいちばん誤解が少なく、楽に伝えることができる方法です。(ただし、pieやpancakeなどは、英語圏では必ずしも甘い食べ物だと認識されているわけではないことに注意。肉のパイや甘くないパンケーキなどもふつうにあります。)
pastryという語は、かなりスイーツに近いかもしれません。パイやデニッシュ、タルトのようなタイプの焼き菓子のことをpastryというので、「スイーツが好きです」と言いたいのなら、I like pastries.といってしまうのも、ひとつの手です。でも、たとえばパンナコッタやプリンアラモードなどはスイーツと呼べると思いますが、これらはpastryではありませんよね。やはり、「スイーツ」をぴったり表わすことばはないのです。
今回は「キャンディーとスイーツ」というタイトルでお話しさせていただきましたが、いかがでしたか? あなたはcandyとsweetの意味を、しっかり理解していましたか? 今回のものは、辞書を引いただけでは具体的にどんなものかわかりにくい面もあると思いましたので、できるだけいろいろなものを挙げて説明してみましたが、「キャンディーはcandyだろう」と思って辞書を引いたことがなかった、という方も、多かったのではないでしょうか。
このコラムで繰り返しお伝えしていることですが、知っていることばだと思ってあなどらずに、辞書を引いてみるといいですよ。意外な意味、知らなかった使い方を発見することができる、よい機会になると思います。