前回、日本語のアピールと英語のappealは意味がずれていて、日本語でもっともよく使われる意味は日本独自の用法である、とお話ししました。
では、英語のappealという語はいったいどういう意味で、どうやって使ったらよいのでしょうか。「ウィズダム英和辞典」にappealの使い方がわかりやすくまとまっていますので、いっしょに見ていきましょう。
まずは、動詞の用法からです。
まずは、①としたところを見てください。appealは、自動詞だということがわかりますね。日本語のアピールという語は、多くの場合、「~をアピールする」というような他動詞的な使い方になりますが、これがそもそも英語には当てはまらないことがわかります。英語のappealは、主に「訴える」「要請する」といった文脈で使われる自動詞なのですね。
次に、②を見てください。「誰に」「何を」訴えるのか、という部分です。[appeal to A to do]となっていますが、ここは、日本語と英語が対応している部分に、それぞれ違う種類の線(下線と二重下線)を引きました。下線を引いた「to A」の部分が、「A〈人〉に」と対応しており、二重下線を引いた「to do」の部分が、その後ろの「…するように」に当たっているのです。その下の例文の中でも[to 人 to do]という形がとられていて、そこにも同じように線を引いておきましたので、照らし合わせてみてください。
このように、[appeal to人 to do]というのが、appealの典型的な使い方のひとつだということがおわかりいただけたと思います。appealという単語を使って文を作りたい場合、このカッコの中を参照しながら、ここに単語を当てはめていくと正しい英文ができる、という仕組みになっているのです。
③のところも見てみてください。こちらは「for B」の「B」の部分には、主に〈援助・情報・平静など〉を当てはめる、と書いてあります。つまり、「援助を要請する」とか「情報提供を請願する」とか「平静を求める」といった文脈のとき、前置詞はforを使えばよい、ということですね。上の場合と同じように、下線部分を照らし合わせながら、例文まで読んでみてください。
【2】も見てみましょう。
こちらは、魅力がある、興味を引くといった意味です。この意味では、日本語でもアピールという語を使うことがありますね。
さて、ここでは波線を引いた〈物・事が〉という部分に着目してください。「が」であることがポイントです。このようなカッコの中に〈~が〉と書かれていた場合、「そのカッコの中に書かれているものが、その動詞の主語である」ということをあらわしています。つまり、〈物・事が〉と書かれていれば、「この動詞は主語に物や事をとる」し、〈人・動物などが〉と書かれていたら、「この動詞を使うときは人や動物を主語にする」というふうに読むのです。
そんなわけで、appealを「魅力がある」「興味がある」という意味で使うときは、主語は人ではなく、〈物・事〉をとる、ということがわかります。例文も見てみましょう。1つめの例文は主語が「事(The idea)」、2つめの例文は「物(This car)」が主語です。このように、説明の部分と例文に書かれている内容も、多くの場合対応しています。ここがしっかり読み解けると、自分で英文を作るときに役立てることができるのです。
appealには他にもいくつか用法があり、それぞれの場合の指示が、辞書にはちゃんと書かれています。ぜひ、お手持ちのもので確認してみてくださいね。
*
主語になにを置くのか、目的語は必要なのか、何が言いたいときどの前置詞を使ったらいいのか、よくわからないままに、適当なものを雰囲気で選んでいませんか? 正解は、ちゃんと辞書に書いてあるんですよ。
英和辞典は、よく見れば、正しい英文を自力で作り出すための情報が、しっかりと載せられています。英英辞典でも、学習英英辞典であれば、このような指示は、やはりきちんと書いてあります。それぞれの辞書の、どこになにが書かれているのか、凡例をみながらしっかり把握して、どんどん使いこなしていきましょう!
〈出典〉
- 三省堂『ウィズダム英和辞典 第4版』 iPhoneアプリ「辞書 by 物書堂」版 (2019)