季節のことば

の わき 【野分】

2007年9月3日

どういう意味?

「二百十日」(バックナンバー8/31)でも書きましたが、『大辞林 第三版』には「〔野の草を吹き分ける風、の意〕①二百十日、二百二十日前後に吹く暴風。台風。あるいはその余波の風。また、秋から初冬にかけて吹く強い風。のわけ。のわきのかぜ。[季語]秋。《吹飛ばす石は浅間の ─ かな / 芭蕉 》」とあります。

もう少し詳しく…

『全訳読解古語辞典 第三版』では、語釈のあとに「読解のために」というコラムがあります。そこには「中古の作品では、野分の強風ぶりとともに、その風情も語られている。野分の風は、肌寒さや心細さを感じさせ、人恋しくさせるものであった」として、「源氏物語」や「和泉式部日記」の例が挙がっています。

いつごろに適したことば?

『大辞林』にあるように、二百十日(9月1日ごろ)や二百二十日(9月11日ごろ)のころ、台風が多いころに使われます。

時候のあいさつに使うなら…

「野分の候」「野分の砌(みぎり)」など

ちなみに…

『全訳読解古語辞典』によると「野分」とは「秋に吹く暴風」と解説したうえで、「[関連語]類義語に「嵐(あらし)」があり、特に季節を限定しない暴風の意」とあります。
現代では、秋に吹く暴風といったら「台風」と言うのが一般的でしょう。時候のあいさつで使う場合は、同じように「台風の候」という書き方もあるようです。少し落ち着いたころには「台風一過 秋晴れもすがすがしく」というふうに書き出しに使うのもいいでしょう。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

「時候のあいさつ」の番外編、「季節のことば」では古くから伝えられてきた表現を解説します。