今週のことわざ

助長(じょちょう)

2008年5月12日

出典

孟子(もうし)・公孫丑(こうそんちゅう)・上

意味

現在では、成長を助けるという意味に用いる。本来そういう意味であるが、原典では、無理やりに成長させようとする、余計なことをしてかえって害を招く、やり過ぎなど、否定的な用い方がされている。

原文

宋人有其苗之不一レ長而揠之者。芒芒然帰、謂其人曰、今日病矣。予助苗長矣。其子趨而往視之、苗則槁矣。〔宋人(そうひと)に、その苗の長(の)びざるを閔(うれ)えて、これを揠(ぬ)く者有り。芒芒然(ぼうぼうぜん)として帰り、その人に謂(い)いて曰(いわ)く、今日病(つか)れたり。予(われ)苗を助けて長ぜしむ、と。その子趨(はし)りて往(ゆ)きてこれを視(み)れば、苗は則(すなわ)ち槁(か)れたり。〕

訳文

(孟子(もうし)が浩然(こうぜん)の気について述べ、浩然の気を養うためには努力しなければならないが、その効果を期待してはならない。また、効果を早くあげようとして、無理をしてはならないと言って、たとえ話をした。)宋(そう)の国の人で自分の植えた苗の生長が遅いのを心配して、畑へ行って、苗を引っ張った者がいた。一日苗を引っ張って、すっかりくたびれて家に帰った。家の者に「今日はくたびれた。苗を引っ張って、早く生長するように助けてやった。」その息子が驚いて畑に走って行って見ると、苗は引き抜かれてすっかり枯れてしまっていた。(このように無理に浩然の気を養おうとするとかえって害を招く。それは何も努力しないでいるよりももっと悪い結果になる。)

解説

「浩然(こうぜん)の気」は、「曰(いわ)く、言(い)い難(がた)し」の項でも述べたように、なかなか説明しにくく、把握しにくい。ゆったりとして、率直で、剛毅(ごうき)な心で、宇宙と一体となったような心境とでもいえよう。原典の「芒芒然(ぼうぼうぜん)」は、「ぼんやりする」というよりも、むしろ「ぐったりする」という意味。

筆者プロフィール

三省堂辞書編集部