今週のことわざ

(ま)ず隗(かい)より始(はじ)めよ

2008年8月11日

出典

戦国策(せんごくさく)・燕(えん)策―史記(しき)・燕召公世家(えんしょうこうせいか)

意味

事を始めるには、自分からやりださなければならない。人に言いつける前に自分が積極的に着手せよ、という意味。「隗(かい)」は戦国(せんごく)時代の燕(えん)の人で、郭隗(かくかい)という人。この句の意味は、現在では少し異なり、大事を始めるには、小事から手をつけよ、大事業には、呼び水となる小さなことから始めるのが必要だという意味にも用いる。また我が国では、「まず、あなたがやりなさい」という意味に使うことが多い。

原文

今王誠欲士、先従隗始。隗且見事。況賢於隗者乎。豈遠千里哉。〔今、王誠(まこと)に士を致さんと欲(ほっ)せば、先(ま)ず隗(かい)より始めよ。隗すら且(か)つ事(つか)えらる。況(いわん)や隗より賢なる者をや。豈(あ)に千里を遠しとせんや。〕

訳文

<戦国策(せんごくさく)>(燕(えん)の昭王(しょうおう)に郭隗(かくかい)という食客がいた。王がすぐれた人材を求めているのを聞き、次のような話をしてきかせた。昔、よい馬を求める人がいて、使者に大金を与えて買いにやらせた。そのよい馬は死んでいた。すると使者はその死んだ馬の骨を五百金で買ってきた。主人が怒ると、使者は、死んだ馬さえ大金で買うという評判がたてば、生きた馬なら、もっといい値段で買ってくれるという評判がたつでしょうと言った。果たしてその後よい馬が三頭も手に入ったという。郭隗はこの話を昭王にして、次のように言った。)「もし王様が、今ほんとうにすぐれた人材を広く集めようとなさっているのなら、まずわたくしのような取り柄もない人間を重用してください。わたくしのようなものさえ抜擢(ばってき)してくれるという評判がたてば、もっとすぐれた人間は、千里の道のりを遠しとせず、集まってくるにきまっています。」

解説

『史記(しき)』燕召公世家(えんしょうこうせいか)にもほぼ同じ語句が出てくるが、ずっと簡略で、死馬の骨を買う故事はない。

類句

◆隗(かい)より始(はじ)めよ◆死馬(しば)の骨(ほね)を買(か)

筆者プロフィール

三省堂辞書編集部