[意味]
①宗教上神聖な土地を信者が参拝して巡り歩くこと。②小説・映画・アニメなどの舞台となった場所を訪ね歩くこと。
[同義語]
聖地巡拝
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新しい意味を持つ四字熟語があります。「聖地巡礼」もそのひとつでしょう。新聞記事データベースで見ていくと、映画などのゆかりの地を訪ね歩く意味で使われ始めたのは2000年代に入ってからで、日本経済新聞では2004年6月7日付朝刊の「路上ライブ『ゆず』ゆかりの地に巡礼者」という記事が初出でした。
その後、新しい意味は紙面であまり見られませんでしたが、2016年にアニメ映画『君の名は。』が大ヒットすると、作品のモデルとなった東京都内や岐阜県飛驒市をファンが巡る「聖地巡礼」が話題となり、街おこしや地域経済の活性化につながるキーワードとして紙面に登場する回数も増え、すっかり定着しています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020年5月末、東京・神田神保町の大衆居酒屋「酔の助」が来店客数の激減などにより、約40年の営業に幕を閉じたとの報道がありました。昭和を思わせる懐かしい雰囲気の店内で人気ドラマや映画のロケにも多く使われ、私も映画『舟を編む』を見て〝聖地巡礼〟した口です。加藤剛さん演ずる国語学者が座った同じ席についたこともいまや思い出となってしまいました。
『舟を編む』といえば、出版社の辞書編集部を舞台にした三浦しをんさんの小説。その主人公のモデルの一人とも言われる『大辞林』初版編集長の倉島節尚・大正大学名誉教授が4月に亡くなりました。享年84。倉島さんとは大学の恩師の紹介で知り合い、最近では学会と称する内輪の勉強会の名誉会長に就任してもらい、年に数回ですが日本語について語り合うなど楽しい時間を過ごさせていただきました。今年の新年会の後、2月にもらったメールには「永田町では妙な桜を見る会の答弁が続いていますが、当学会では真っ当で楽しい桜を見る会を開けるといいななどと思っています」とありました。それが新型コロナの影響で花見もかなわず、見舞いに行くこともできませんでした。残念でなりません。
7年前、日経電子版のインタビューに立ち会った際、辞書の編者と編集者の関係について倉島さんに質問しました。「編者は建築家で編集者は現場責任者です。建築家の名前は後世に残っても、建物を作った現場責任者の名前は残りません。辞書編集者が社会的に認められてほしいと思ったからこそ大学教員にもなりましたが、編集者は黒子でいいのだという思いも強くあります」という答えが強く印象に残っています。敬愛する、偉大なる現場責任者のご冥福をお祈りします。
*日経電子版のインタビュー記事はこちら。
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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。