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第14回 【同調圧力】どうちょうあつりょく

筆者:
2020年10月26日

[意味]

集団の中で、多数派に合わせなければならなくするような圧力。

[関連]

自粛警察・相互監視・不要不急

 * 

「同調圧力」という語を見たり聞いたりすることが多くなりました。『三省堂現代新国語辞典』第6版の語釈に「[とくに学校で]仲間外れにされることや差別視されることをおそれて、人の意見や行動にいやでも合わせなければならないという無言の圧力」とあるように、新聞記事でも、2000年代に入ってから教育現場や職場内の話でぽつぽつと見られるようになりました。

ここ数年、日本経済新聞での出現記事件数は増加傾向ではありましたが、2020年になってからの急増ぶりは顕著です。これには新型コロナウイルスの感染拡大がかなり影響しています。

感染拡大を防ぐ目的で2月ごろからイベントの中止や延期が相次ぎました。この動きには「よそが中止にしているのだから、うちも……」といった同調圧力も影響したと思われます。外出時にうっかりマスクを着け忘れ、周囲の冷たい視線に耐えられず慌ててマスクを買いに走ったという人も少なくないでしょう。4月の緊急事態宣言発出による外出自粛、飲食店や商業施設への休業要請が始まると、それに従わない人たちが一般市民から激しく非難されることもありました。「自粛警察」の横行や、県外移動者に対する嫌がらせ、感染者へのバッシングとなると、無言の圧力を越えた威圧行為です。見えないウイルスの脅威が人を過激な行動へと走らせました。

考える辞書『新明解国語辞典』の第8版が11月19日に発売されます。広告によれば「同調圧力」も新項目として掲載されるとのことで、語釈は「集団の中で、常にまわりと同じように考え、振る舞わなければならないと感じ、そのような行動をしないではいられない、逃れがたい雰囲気」とありました。コロナ禍、もはや雰囲気を越えてしまっている状況なのかもしれません。

「同調圧力」の登場記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。2020年は9月まで。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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