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第32回 【特定少年】とくていしょうねん

筆者:
2022年4月25日

[意味]

少年法で18歳以上20歳未満の者。18歳以上の少年。2022年4月から民法の成人年齢が18歳に引き下げられるのにあわせ、適用年齢が20歳未満である少年法の特例規定として設けられた。

[関連]

推知報道

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甲府市で2021年10月、50代夫婦が殺害された事件で、甲府地検は4月8日、殺人や現住建造物等放火などの罪で起訴した被告(19)の氏名を公表しました。これは4月1日に施行された改正少年法で18歳以上の少年が「特定少年」に位置づけられたことによるものです。検察当局が「特定少年」の氏名を公表したのは初めてのことでした。

少年の実名や顔写真など本人が推定できる報道(推知報道)は少年法61条で禁じられていますが、4月の改正法施行により同68条で、18、19歳のときに起こした事件で起訴された特定少年については可能となりました。今回、全国紙は5社すべてが実名で報道し、産経新聞は顔写真も掲載しています。

とはいえ、特定少年の氏名が一律に公表されるというわけではありません。最高検は氏名公表の検討対象を「犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻な事案」とする基準を示し、裁判員裁判対象事件を典型例に挙げました。また、日本新聞協会は1958年の「少年法第61条の扱いの方針」を改定し、「氏名、写真などの掲載は各社の判断で行う」としています。実名で報道する社が多いなか、東京新聞(中日新聞)のように匿名にした社もあります。

紙面に氏名を掲載した社でも、インターネットで無料で見られる記事については名前を伏せる対応をしたところがありました。少年のプライバシーと知る権利の関係について、あらためて考えさせられます。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。