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第36回 【未利用魚】みりようぎょ

筆者:
2022年8月29日

[意味]

知名度がない、サイズが規格外などの理由により一般に流通しない魚。多くは廃棄処分などされてきた。日本の漁獲量はピークから3分の1程度の規模となり、昨今では貴重な水産資源として有効活用する動きが広がる。

[類語]

低利用魚

 * 

未利用魚といわれる魚を利活用する動きが広がっています。今年に入り日本経済新聞での「未利用魚」の出現記事件数が例年よりも増加傾向となり、8月中旬現在で10件ですが、過去最高となりました。

未利用魚とは、漁獲量が一定の出荷量に満たない、鮮度が落ちやすい、調理に手間がかかるなどといった理由で、水揚げされても市場に出回らず処分される魚のこと。正式な統計はありませんが、漁港によっては1回の水揚げの約3割が未利用魚になっているといわれます。日本の漁獲量が2021年に417万トンと過去最低を更新し、ピークだった1984年(1282万トン)の約3分の1に減少するなか、未利用魚は貴重な水産資源として見直されるようになってきました。

2000年に入ってからの記事を見ると、初期のころはソーセージやかまぼこといった練り製品などの加工品への活用が主流でした。それがここ数年では、学校給食や外食産業でのメニュー化など用途が広がりつつあります。SDGs(持続可能な開発目標)の普及で企業や消費者の意識が変わるなか、アプリで未利用魚の詰め合わせ商品を販売するような新しいビジネスも生まれ、受け入れられています。

サケやサンマなど食卓でおなじみの大衆魚が不漁により“高級魚”となるなか、未利用魚の利活用はさらに広がると考えられます。「未利用魚」の出現記事件数はしばらく増え続けるでしょうが、魚の利用が定着することで、そのうち言葉自体は使われなくなるのかもしれません。

「未利用魚」の出現記事件数
*日本経済新聞の記事を調査。2022年は8月15日まで。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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