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第38回 【論功行賞】ろんこうこうしょう

筆者:
2022年10月31日

[意味]

手柄の有無・大小を論じ定めて、それに応じた賞を与えること。

(大辞林第四版から)

[類語]

信賞必罰

[関連]

身体検査

 * 

新聞に出てくる「論功行賞」と言えば、主に政治記事で使われ、自民党総裁選挙や組閣のあった年に数が増えるといったところが特徴でしょうか。記事データベース「日経テレコン」で2000年以降の出現記事件数を調べると、件数が2桁になった年が総裁選と重なることが多くありました。

グラフで最も高い山は2006年の第1次安倍晋三内閣が発足した年の27件。次に高い2012年(17件)は、民主党政権(野田佳彦首相)の時で代表選を実施、野党の自民党でも総裁選があり安倍氏が総裁に返り咲いています。直近では2021年に菅義偉氏の後継として岸田文雄氏が総裁に選出されました。首相の座につながる党内選挙で票集めに奔走した議員には人事で相応の「論功行賞」が与えられ、記事に登場するということです。

せっかく「論功行賞」で得た大臣ポストも、不祥事などが発覚し短期間で手放す事例がこれまで幾度もありました。そんなときは「身体検査が甘い」などの声が聞こえてきます。「身体検査」も閣僚候補者などの身辺調査の意味で使われ、政治用語としてよく見られます。ちなみに「身体検査」が一般に広まったとされるのは第1次安倍政権の時で、5人もの閣僚の辞職が続きました。

さて、皆さんの職場に上司の悪事をもみ消すなどして人事で優遇されたような人物はいませんか。そんなことがあれば「論功行賞」と揶揄(やゆ)する向きもあることでしょう。そんな輩(やから)が隣の席にでもいようものなら職場の士気が低下してしまいます。

組織にとって褒美を与える「論功行賞」は必要なことではありますが、賞罰を厳格に行う「信賞必罰」のほうがより大事なことだと考えます。

【論功行賞】の出現記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。2022年は9月30日まで。

* * *

新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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