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第47回【迷惑行為】めいわくこうい

筆者:
2023年7月31日

[意味]

他の人に不利益を与えたり、不快に思わせたりする行為。

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新聞にはいろいろな迷惑行為が登場します。今年の上半期(1~6月)の新聞記事を見ると、突出して多いのが回転ずしチェーン店などの飲食店で起きたものでした。

レーン上に回るすしや湯飲み、卓上に置かれたしょうゆの注ぎ口に唾液をつけるなどした行為を映した動画を、客がSNSに投稿し拡散されるケースです。飲食業経営を主な事業とする企業を対象にした「第49回日本の飲食業調査」(6月発表)によれば、迷惑行為に遭った企業は28.9%にのぼり、特にファストフード店では半数以上が経験しているといいます。

ビジネスデータベースサービス、日経テレコンを使い「迷惑行為」が1990年以降の日本経済新聞朝夕刊でどのくらいの記事に出現しているか見てみました。1990年代はほぼ1桁で推移していたものが、1999年以降は2003年を除き2桁が続き増加傾向です。2023年は半年で29件にもなりました。

1990年代の記事を見て多かったのがダフ屋行為。プロ野球やサッカー、人気歌手・アイドルグループのコンサートなどのチケットを会場周辺で定価よりも高く販売し、逮捕されるもの。ほかに鉄道車内での痴漢、盗撮、航空機内で客室乗務員に対する暴言……。ストーカーも1999年の記事で見られました。

2000年代に入ってからは、これらの行為のほか、歩行喫煙(路上喫煙)、ゴミのポイ捨て、犬のフンの放置といったマナー違反などが取り上げられています。インターネット上の迷惑行為もこの頃から見え始めました。

グラフには2つの山があります。2013年は、関西のテーマパークでアトラクションを中断させる行為を繰り返した事件が発生。迷惑行為をSNSに投稿した大学生らが略式起訴されました。2018年は客からの暴言・暴力といった、今で言う「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が取り上げられています。

繰り返される迷惑行為。今年に入ってからは、被害企業が損害賠償請求する訴訟を起こすといった動きも出てきました。迷惑行為は周囲を不快にさせるだけでなく、自らにも不利益をもたらすものであることを肝に銘じなければなりません。

「迷惑行為」の出現記事件数

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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