[意味]
物事が不安定になり、危機に陥るおそれのある状況のたとえ。世論調査の内閣支持率は20%台が「危険水域」とされ、20%を切ると「退陣」などともいわれる。
[関連]
一喜一憂
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危険水域といえば「海・川などで、進入すると危険がある範囲」(三省堂国語辞典第8版)のこと。船が航行する際に、座礁や遭難、紛争に巻き込まれる恐れのある危険性の高い水域などをいいます。新聞では実際にこうした範囲を指して使われることもありますが、どちらかといえば、比喩として「経済や市場の過熱が危険水域に達する」のような「危険がある事態」(同)を言うことが多いでしょう。
なかでもよく見られるのが政治関係の記事。報道各社が毎月行っている世論調査で公表される内閣支持率は、30%を割ると「危険水域」などといわれます。過去の政権でも支持率が30%台半ばに差し掛かると、運営に安定を欠くことが多く見られました。こうした政権の「危険水域」は日本経済新聞社の記事データベースで調べると、初出と見られるのが米政権関係で1985年に1例あり、国内の話では1990年代に入ってから使われていました。それ以前は「30%を割れば黄信号、20%を下回れば赤信号」とも言われていたようです。
日本経済新聞社とテレビ東京が10月27~29日に行った調査では、岸田文雄内閣の支持率は前月から9ポイント低下して33%となり、危険水域に迫りました。これは2021年10月の政権発足以来の最低で、2012年の自民党政権復帰後でも最も低い数字。各社調査でも低下傾向は変わらず、11月に入り軒並み20%台に落ち込んでいます。岸田首相は11月9日に年内の衆院解散・総選挙の見送りを事実上表明。政権側の「(世論調査の数字に)一喜一憂しない」との発言は、支持率低迷時によく聞かれるものです。
同じ政治関係では、派閥の議員数でも「危険水域」が使われます。所属議員が100人の大台に達すると分裂リスクが出てくるのだとか。こちらは内閣支持率とは異なり、数字が増えた場合の表現になります。
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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。