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第52回【農福連携】のうふくれんけい

筆者:
2023年12月25日

[意味]

農業と福祉の連携。生きづらさや障害を抱える人たちが農業分野で就労することで、自信や生きがいを持って社会参画を実現していくという取り組み。高齢化が進む農業の新たな働き手確保にもつながる。

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高齢化や後継者難などの理由で担い手不足が深刻になっている農業。そこで障害者らの活躍を促す「農福連携」が広がっています。4月15日付の日本経済新聞によれば、2021年度に全国で農福連携に取り組んだ障害者就労施設と農業者の合計は前年度より23.2%増えました。最大の伸び率だった千葉県は62.7%増になったといいます。

農福連携は政府が2016年に打ち出した「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込まれたことなどから国や自治体の推進施策が拡大。障害者施設が自ら農園を整備したり、外部農家に障害者を受け入れてもらったりするなどの方法で行われています。また、JX金属のように、2023年度からグループ会社で障害者を雇用し本格的に農業に取り組む企業も出てきました。

記事データベース「日経テレコン」で「農福連携」を検索したところ、日本経済新聞での初出は2015年4月2日付の静岡経済面。古いところでは、日本農業新聞で2010年1月8日付の使用例がありました。こうして見るとまだまだ新しい語といえるでしょう。

農業に関係するということで、日本経済新聞での登場記事は地域経済面が全体の8割を占めました。他紙でも地方紙での使用件数が多く見られるなど、都市部よりも地方でよく見られるのが特徴だとも言えそうです。

障害のある方々の社会参加と農業の担い手不足の解消を目指す「農福連携」は、地域活性化の役割のひとつとして定着していくのではないでしょうか。今後しばらくは記事件数が伸びていきそうです。

 

2023年は11月まで

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。