ニュースを読む 新四字熟語辞典

第53回【党首討論】とうしゅとうろん

筆者:
2024年1月29日

[意味]

国家基本政策委員会で、週一回四五分間、自由なテーマで一問一答形式によっておこなわれる首相と野党党首の討論。イギリス議会下院のクエスチョン-タイムを参考に、二〇〇〇年(平成一二)の通常国会より導入。(大辞林第四版から)

 * 

首相と野党党首が論戦を交わす「党首討論」がここのところ実施されていません。直近最後の開催は菅義偉氏が首相だった2021年6月で、正式導入した2000年以降の首相11人のうち、一度も行っていないのは現職の岸田文雄首相だけとなっています。

党首討論の導入は国会審議を活性化させることを目的にしたもので、二大政党制を念頭にトップ同士の論戦を通じてどちらが政権にふさわしいかを国民に示す役割が期待されていました。設置された2000年には最多の8回が開かれましたが、徐々に減りつつあります。森友・加計学園問題が政権を揺るがした2017年とコロナ禍に見舞われた2020年はゼロで、それ以外でも年1~2回にとどまり、岸田政権でもゼロ。記事データベース「日経テレコン」で調べた「党首討論」の日本経済新聞での出現記事件数も、2000年を頂点に減少傾向が続きます。

国会会期中、首相が本会議や予算委員会などに出席する週を除き、週1回45分間、水曜日の午後3時から開催するとした与野党の申し合わせは形骸化。無用な失点を避けたい首相側と、質疑時間が長い予算委を優先したい野党第1党・立憲民主党側の双方に、開催に消極的な姿勢がうかがえます。

こうした現状を踏まえ、日本維新の会、国民民主党などは昨年12月、所管委員会である国家基本政策委員会を廃止するための法案を衆院に提出しました。維新の遠藤敬国会対策委員長は記者会見で「無駄な税金を使う委員会は必要ない」などと述べています。法案は継続審議となりました。

岸田首相の在任中に党首討論が実施されることはあるのでしょうか。

* * *

新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。