(4) コンピュータ時代
このコンピュータ全盛の時代に、わが「トミイ方式」の中の「コンピュータ方式」の採用は、筆者自身がITに弱かったこともあり、比較的遅く、わずか10数年前です。現にいろいろな友人・知人から、「何故コンピュータを採用しないのか」、しつこく問われ続きました。しかし、いかにコンピュータが賢くても、「カード方式」のすべてにとって代われるものであるとは、コンピュータ音痴の筆者でさえも、どうしても思えなかったため、「コンピュータ方式」に切り換えることはできませんでした。そこで、全面切り替えではなく、小出しにしながら部分的に「コンピュータ方式」を採用していきました。
「トミイ方式」の外層だけしか見ることができなかった人は、そのほとんどが、「いまや、人間にできることでコンピュータにできないことは何もない」というスタンスで、「コンピュータ方式」への全面的な切り替えを迫ってきました。しかし、「トミイ方式」のすべてを隅から隅まで理解していた筆者にとっては、「トミイ方式」はそれほど単純ではなく、もっともっと奥の深いものであり、おそらく、「トミイ方式」の90%はコンピュータに取って代われるかもしれないが、取って代われないものが10%あり、その10%が「トミイ方式」の真髄であるという信念は、最後まで揺るぎのないものでした。
というわけで、「コンピュータ方式」への完全な切り替えというわけにはいかず、これまでも何回となく述べてきたように、「コンピュータ方式」の一部採用という程度になっています。
それでは、何が「コンピュータ方式」への完全な切り替えを阻んでいるかというと、そこにはいろいろな理由がありますが、大きな理由を1つだけ挙げるならば、それは「分類の煩雑さ」です。第10回(10月24日公開)で述べたように、「トミイ方式」を始めてから35年余り経過している現在では、「分類工程」はすでに終わっており、すべての英文データは「分類」だけで43,000個から45,000個あります。“「分類」だけ”と言ったのは、「トミイ方式」には、実は、その考え方として、「分類」と「順序」の2つがあり、「順序」までも入れると、数えることのできないくらいの数になります。これをコンピュータに担わせるということは、筆者自身の経験から考えると、ほとんど不可能に近く、どうしてもやろうとするならば、「カード方式」の手法をかなり取り入れなければならないことになります。
詳しいことは、後の「コンピュータ方式」による「英文データの収集と分類・収納」(II)のところで述べることにします。
したがって、現在では、「トミイ方式」は「カード方式」と「コンピュータ方式」の併用となっています。原稿が電子化されている場合には、迷うことなく「コンピュータ方式」で英文データを収集し、すでに「分類」が終わっている43,000個から45,000個の末端単位――これを、昔、使っていた言葉である「お座敷」と言っています――の中に収納しています。しかし、原稿が英字の雑誌や新聞、原書などの場合には、パソコンに打ち込んだり、OCRで電子化したりすることがリーズナブルである場合には、その作業をしてから「コンピュータ方式」で英文データを収集・収納していますが、その一連の作業がリーズナブルではない場合には、ほとんどの場合、いまだにカードに収納しています。
実は、これらの点が「コンピュータ方式」に移行するかどうかの大きな分かれ目になります。
したがって、「コンピュータ時代」と言ってはいますが、実際には「コンピュータ方式」が「カード方式」におぶさっている「カード+コンピュータ時代」といったところです。
いずれにしても、「カード方式」であれ、「コンピュータ方式」であれ、収集したデータは、必ず「使いたい時にはいつでも使えるように分類・収納されていること」、これが必須です。「収集はしたが、使おうと思っても出てこない」では、そのデータはないのも同然です。
余談になりますが、筆者は、この「カード方式」を採用するようになってからは、この方式を英文データの収集・整理のみではなく、日本語のデータ収集・整理にも使っています。
日本語の新聞、雑誌、書物などを読んでいる時、上記したような対象データを貪欲に収集しています。その対象となる読み物によって、いつでも出せるように分類・整理しているものもあり、単に収集しているだけのものもありますが、決して赤で傍線を引いたままのものはありません。
これで“4「トミイ方式」の変遷”を終わり、次回からは、「トミイ方式」の実体により近づいた“5「トミイ方式」の機能と目的”に入っていきます。