欧米型の読解問題、つまり“PISAの読解力で出されているような問題”には「大枠」となる原理がある。いくつかの原理が存在するのだが、今回は最も基本的な「問題解決方式」を紹介することにしよう。
何らかの問題に対処する場合、自分が過去に積み上げてきた知識と経験だけで解決することも不可能ではない。だが、第13回で述べたように、急激で予測不能な変化をする社会においては、過去に積み上げた知識や経験は必ずしも通用しない。そこで、新たな知識を取得し、それを過去に積み上げた知識や経験と関連付けながら問題解決を図っていくことが必要になってくる。
このように、新たな知識(外部情報)と、自分の知識や経験(内部情報)とを統合して問題に対処することを、「創造的問題解決(Creative Problem Solving:CPS)」という。
PISAの読解力においては、この創造的問題解決の能力が求められている。すなわち、テキストに含まれる情報(外部情報)を取り出し、自分の知識や経験(内部情報)と関連付けながら解釈し、熟考し、評価するということだ。
PISAの読解力の創造的問題解決としての側面に注目し、それを大枠とした発問の原理のことを問題解決方式というのである。
問題解決方式においては、テキストを「問題と解決例の提案者」と見なす。テキストが「こんな問題があったので、このように解決しましたが、いかがでしょうか?」と提案しているととらえるのである。
たとえば、「桃太郎」であれば「鬼という問題があったので、こらしめて宝物を奪取するという解決策をとりましたが、いかがでしょうか?」となる。「スイミー」であれば、「まぐろという問題があったので、みんなで大きな魚の姿をつくって追い出すという解決策をとりましたが、いかがでしょうか?」となる。(これらは問題と解決例の設定の一例に過ぎない。同じ物語であっても、ほかのかたちで問題と解決例を設定することは可能である)
テキストの提案を受けて、「ほかの方法はなかったのか?」「ほかの方法があるのに、なぜその方法がとられたのか?」「その方法の利点と難点は?」というように、提案された解決例について徹底的に検証する。そのうえで「最善の解決策」を自分の意見として提案していく。第11回でも述べたことだが、「最善の解決策」を求める場合、「あなたが主人公だったら、どうやって問題を解決しますか?」と問うことが多い。
つまり、テキストに示された解決例を外部情報として、それと自分の知識や経験(内部情報)と関連付けながら、より良い解決策を見出していく。まさに創造的問題解決なのである。このような読解教育は、グループ学習で他人と相談しながら進めると、さらに効果的である。他者の意見や知識や経験も外部情報として利用できるからだ。もちろん、PISAのようなペーパーテストでは、独力で創造的問題解決するしかないのであるが。
この問題解決方式を大枠として発問を組んでいく。もっとも単純な発問の組みかたは、原理通りに聞くことである。たとえば――
・主人公が遭遇した問題は何ですか?
・主人公はその問題をどうやって解決しましたか?
・その解決方法の良い点と悪い点をあげなさい。
・そのほかに解決方法はありませんか?
・あなたが主人公だったら、どうやって問題を解決しますか?
これでもかまわないのだが、いかにも工夫がない。では、どのように工夫して聞けばいいのか? これについては、次回以降で説明することにしよう。