(QWERTY配列の変遷100年間(1)からつづく)
1872年7月、ローデブッシュ(Clinton DeWitt Roudebush)のショールームに飾られていたタイプライターは、42キーの最新鋭機でした。最上段の数字とハイフンは左に1文字移動しており、その右にコンマとアポストロフィが配置されていました。Wの左に追加されたキーには、Qが移動していました。Zの左には&が追加され、Nが最下段の真ん中へと移動していました。
1873年9月、クロー(Jefferson Moody Clough)とジェンヌ(William McKendree Jenne)は、「Sholes & Glidden Type-Writer」の試作機を完成していました。キー数は44に増やされていて、上段の右端にはコロンが、中段の左端には「パラグラフ・セパレータ」と呼ばれる電信特有の記号が、それぞれ追加されていました。また、ピリオドやアポストロフィは下段の右下に集められていて、代わりにRとPが上段に移動していました。さらに、Iの右横にOを移すことで、数字の1と0(および9と0)が隣りあうようになっており、そのあおりでYが右の方へと移動させられてしまいました。
1874年4月、E・レミントン&サンズ社は「Sholes & Glidden Type-Writer」の1号機をリリースしましたが、そこではYが真ん中に戻されていました。ショールズがYを戻すよう主張したもので、実際、ショールズは、このキー配列を含む特許を取得しています(U.S. Patent No. 207559)。ただし、この変更の結果、Iと8が離れてしまい、IやOがここに配置された当初の意図がわからなくなってしまいました。また、このキー配列では、上段の文字だけでTYPEWRITERが綴れるようになっていますが、「Sholes & Glidden Type-Writer」というブランド名を考えると、ハイフンが同じ段になければ意味がないので、これは単なる偶然だと考えられます。
(QWERTY配列の変遷100年間(3)に続く)