お店に並ぶ果物に新顔が増えてきました。マンゴーやアボカドなどは、ちょっと前はそうそう手に入りませんでしたが、今ではリンゴやバナナの横に対等に並んでいます。
グアバという果物の名前も、最近よく目にします。もっとも、一般には、生で食べるよりもジュースとして飲む機会のほうがずっと多いでしょう。私の飲んだグアバジュースは、ピンク色の液体で、独特の香りがあって、甘みの強いものでした。
『三省堂国語辞典』では、今回の第六版で「グアバ」を載せることにしました。語釈を書くにあたっては、まず最初の手続きとして、果実に関する事典を開いてみました。すると、〈フトモモ科……熱帯アメリカ原産で……〉と、何行にもわたって詳しい説明が続いています。においや味については〈特有の芳香があり、甘く……〉と書いてあります。
実を言うと、私はグアバの実物を知りませんでした。ですから、事典の記述は参考になりました。でも、いまひとつ、グアバの鮮明なイメージが浮かびません。専門の事典というものは、取り上げるものに関するあらゆることを記述しようとするため、そのものの特徴がかえって不鮮明になるきらいがあります。一方、『三国』は、「それは要するにどういうものか」を一言で説明する辞書ですから、専門の事典の丸写しではすまされません。
この際、本物のグアバを手に入れたいと思いました。ところが、近所のいくつかのスーパーを回っても、そんなものは置いていません。案外、身近な果物ではないようです。インターネット通販で取り寄せては、と考えましたが、まとまった量を注文しなければならず、金額がばかになりません。ほうぼう探し回った末に、銀座の沖縄県産品の店で、やっと数個のグアバを買い求めることができました。
入手したグアバを観察し、よく味わってみたりして、以下の語釈が完成しました。
〈熱帯アメリカ原産の、小ぶりの丸い くだもの。皮はうす緑色で、果肉はピンク色。強くあまい かおりがあるが、味はうすい。〉
そう、味は薄いのです。市販のグアバジュースから想像されるほど、甘みは強くありません。これについては、ウェブサイトでグアバを食べた人たちの感想文を調べても出てくることなので、衆目の一致するところでしょう。『三国』の説明は、こういう点で専門の事典よりも実感的だと、自信を持っています。