旧字の「肉」は常用漢字なので、子供の名づけに使えます。新字の「宍」は、常用漢字でも人名用漢字でもないので、子供の名づけに使えません。旧字の「肉」は出生届に書いてOKですが、新字の「宍」はダメ。「宍」と「肉」の新旧には議論があるのですが、ここでは「宍」を新字、「肉」を旧字としておきましょう。

昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、旧字の「肉」を含む2528字が収録されていました。昭和21年11月5日、国語審議会が答申した当用漢字表にも、旧字の「肉」が収録されていました。翌週11月16日に当用漢字表は内閣告示され、旧字の「肉」は当用漢字になりました。昭和23年1月1日、戸籍法が改正され、子供の名づけに使える漢字が当用漢字表1850字に制限されました。当用漢字表には、旧字の「肉」が収録されていたので、「肉」は子供の名づけに使ってよい漢字になりました。新字の「宍」は、子供の名づけに使えなくなりました。

それから半世紀以上が過ぎ、平成16年3月26日に法制審議会のもとで発足した人名用漢字部会は、「常用平易」な漢字であれば人名用漢字として追加する、という方針を打ち出しました。この方針にしたがって人名用漢字部会は、当時最新の漢字コード規格JIS X 0213 （平成16年2月20日改正版）、文化庁が表外漢字字体表のためにおこなった漢字出現頻度数調査（平成12年3月）、全国の出生届窓口で平成2年以降に不受理とされた漢字、の3つをもとに審議をおこないました。新字の「宍」は、全国50法務局のうち出生届を拒否された管区は無く、JIS第1水準漢字で、出現頻度数調査の結果が146回でした。この結果、新字の「宍」は「常用平易」とはみなされず、人名用漢字に追加されませんでした。

平成23年12月26日、法務省は入国管理局正字13287字を告示しました。入国管理局正字は、日本に住む外国人が住民票や在留カード等の氏名に使える漢字で、新字の「宍」と旧字の「肉」を含んでいました。この結果、日本で生まれた外国人の子供の出生届には、旧字の「肉」に加え、新字の「宍」も書けるようになりました。これに対し、日本人の子供の出生届には、旧字の「肉」はOKですが、新字の「宍」はダメなのです。