大規模英文データ収集・管理術

第43回 英文データの実践的収集方法(カード方式)・4

筆者:
2013年2月4日

(c) 複文一葉式(続き)

○ 上級者用方式

前回、極めて簡単な、「初心者用方式」について説明しました。今回は、理解度も高く、かつ「トミイ方式」の持つすべての機能、すなわち、活用機能、学習機能、制作・発表機能のすべてを目的としている読者を対象に説明をします。したがって、当然のことながら、「初心者用方式」と「上級者用方式」との間には、無限のバリエーションがあることをご理解いただき、ご自身の理解度や目的に合ったデータ収集をしていただくとよいと思います。
注:「活用機能」、「学習機能」、および「制作・発表機能」については、この連載の第13回(2011年12月5日公開)第14回(2011年12月19日公開)第15回(2012年1月9日公開)をご参照ください。

今回は、前回(第42回)で使用した「添付-B」に示した3つあるパラグラフのうち、2つ目のパラグラフを使って説明していきます。3つ目のパラグラフは、次回、第44回で取り上げます。

作業は次の通りです。

(1) まず、前回使用した「添付-B」に示すようにパラグラフ単位に切り取ります。

(2) 切り取ったパラグラフをカードに貼り付けます。「添付-C」参照。これを「マスターカード」と呼びます。ここまでは、前回の「初心者用方式」と同じです。

(3) コピー機を使って「マスターカード」から必要な枚数だけコピーします。「添付-E」参照。これを「スレイブカード」と呼びます。最初に使用した3つのパラグラフすべてが表示されていますが、ここで、実際に使用するのは、真ん中のパラグラフです。
 注:詳細な計算根拠は割愛しますが、「必要な枚数」とは、細かく採取していけばきりがありませんが、このサンプルのような英文の場合、経験的に採取する英文データを1行当たり2個とし、それに1パラグラフ当たりの行数を掛けて得られる英文データの数のことをいいます。このサンプル・パラグラフは、約9.5行ありますので、これに2を掛けると、「必要な枚数」は約19枚ということになります。もちろん、あるときは枚数が足りなくなることもあり、またあるときは余ってしまうこともありますが、足りなければさらに焼き増しすればよいでしょうし、余れば、さらに細かくデータを採取すればよいことになります。それは、経験を積みながら、ご自身にあった「必要な枚数」を見つけていくとよいと思います。

(4)「スレイブカード」を1枚ずつ取り出し、最初から順番に採取したいデータを拾っていきます。その作業は、前回説明した「初心者用方式」のステップ(3)とほとんど同じです。ご参考までに、以下に引用します。このようにしてできたカードを「データカード」といいます。

(3) 採取したい英文データの下に赤でアンダーラインを引き、カードの上部には、分類名を同じく赤で記入します。

分類名は、必ずしも、大分類、中分類、小分類すべてについて記入する必要はなく、自分で理解・記憶できる分類名は省略してもかまいません。

注:せっかく「スレイブカード」を19枚作成したわけですので、このパラグラフから19個のデータを採取すべきなのですが、紙幅の関係でそのすべてをここに表示することができませんので、なるべく、まんべんなく7つの「大分類」すべてにわたる代表的なデータを6個選んで採取することにします。

「添付-F」にテータカード7,8,9の3個を、そして、「添付-G」にテータカード10,11,12の3個をそれぞれ載せてあります。

atomii43fs.jpg

データカード7
理由:これは、前回、「データカード4」で採取した「種族全体」を表す表現と同じで、無冠詞の複数名詞という表現方法です。説明は、すべて前回、「データカード4」をご参照ください。
機能:学習、活用、制作・発表の順です。
場所:大分類は「品詞別」です。中分類は「冠詞」です。無冠詞も冠詞のうちの1つという考え方です。

(5) 同じように、2枚目の「スレイブカード」を取り出し、「データカード8」を作成します。これは、複数個ある語や句や節や文を列挙するときの表現に注目して作成した「データカード」です。

データカード8
理由:複数個ある語や句や節や文を列挙するときの表現方法には、まず大きく分けて
○主文の中に列挙項目を入れる場合(「データカード8」はこれに該当します)
○主文とは別に独立させて列挙項目を羅列する方法
の2つがあり、そのそれぞれは、さらに何十という細分類、細々分類、極細分類に分けられます。今はまだ1つだけですので、とりあえずは大分類が「その他」の中に入れておくだけで十分でしょう。
機能:学習、活用、制作・発表の順です。
場所:大分類は「その他」です。中分類は「列挙の仕方」になります。

(6) 次は3枚目の「スレイブカード」を取出し、「データカード9」を作成します。

データカード9
理由:solid-state switch で採ってみました。技術文では、よく solid-state という言葉が冠されている単語を見かけます。意味的には、「solid 状態の」ということであり、そのため、多くの場合、「個体~」という言葉に使われてます。それ以外の意味にも使われていることがありますので、solid-state という言葉がついている表現は、なるべく多く採取するとよいと思います。
機能:学習、活用、制作・発表の順です。
場所:大分類は「アルファベット順」です。その中の solid-state という場所に置きます。

次は、「添付-G」に載せられている、テータカード10,11,12の3個です。

atomii43g2.jpg

データカード10
理由:an object と the object の両方にアンダーラインが引いてあります。冠詞の一番基本的な用法に「最初に出てきた名詞には a,二度目に出てくるときはthe」というものがありますが、その用法に注目して採取したデータです。技術文には、そのような簡単な例ばかりでなく、もっと複雑な例もありますが、この基本ルールなしには理解できないことです。
機能:活用、学習、制作・発表の順です。
場所:大分類は「品詞別」です。中分類は「冠詞」、小分類は「最初の a と二度目の the」でよいでしょう。

データカード11
理由:分数の表し方にはいろいろありますが、この a fraction of ____ というのは「____の何分の1」という程度の意味を持つもので、この例では、「1インチの何分の1くらいの」というものです。いくつかある分数の表現のうちの1つとして採ってみました。
機能:活用、学習、制作・発表の順です。
場所:大分類は「数量表現別」で、中分類は「分数」です。

データカード12
理由:type という単語は、慣れない人は「形」とか「型」などと訳してしまいますが、技術文では「種類」という意味で使われている場合が多いです。ここでは、type を「表現別」の「種類」に採ってみました。
機能:活用、学習、制作・発表の順です。
場所:大分類は「表現別」で、中分類は「種類」です。

これで、「収集」、「分類」、「収納」の全工程が終わります。

次回は、3つ目のパラグラフを使い、そこから、9個のデータを採取してみようと思います。

筆者プロフィール

富井 篤 ( とみい・あつし)

技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。