「Adler 7」は、クライヤー(Heinrich Ludwig Kleyer)率いるドイツのアドラー社が、1900年に発売したタイプライターです。アドラー社は「Adler 7」の開発に際し、ウィリアムズ・マニュファクチャリング社の技術供与を受けていて、その結果「Adler 7」は「Wellington No.2」に非常によく似ています。
「Adler 7」の特徴は、スラスト・アクションと呼ばれる印字機構にあります。各キーを押すと、対応する活字棒が、まっすぐプラテンに向かって飛び出します。プラテンの前面には紙が挟まれており、そのさらに前にはインクリボンがあって、まっすぐに飛び出した活字棒は、紙の前面に印字をおこないます。これがスラスト・アクションという印字機構で、打った瞬間の文字を、オペレータが即座に見ることができるのです。
30本の活字棒には、それぞれ活字が上下に3つずつ埋め込まれていて、プラテン・シフト機構により90種類の文字が印字されます。「Z」の左にあるシフトボタンの右側を押すと、プラテンが沈んで、大文字が印字されるようになります。シフトボタンの左側をさらに押し込むと、プラテンがさらに沈んで、数字や記号が印字されるようになります。なお、キーボード右側にあるボタンは、左側のシフトボタンと同じ形をしていますが、紙の着脱用ボタンです。また、スペース・キーの右下にあるのは、バックスペース・レバーです。
「Adler 7」のキーボードは、いわゆるQWERTZ配列です。基本キー配列の場合、上段のキーには、小文字側にqwertzuiopが、大文字側にQWERTZUIOPが、記号側に1234567890が、それぞれ並んでいます。中段のキーには、小文字側にasdfghjkl,が、大文字側にASDFGHJKL;が、記号側に%':§/?+=&.が、それぞれ並んでいます。下段のキーには、小文字側にyxcvbnmäöüが、大文字側にYXCVBNMÄÖÜが、記号側にß-„”!₰ℳ()_が、それぞれ並んでいます。
「Adler 7」には、活字にフラクトゥール(𝔉𝔯𝔞𝔨𝔱𝔲𝔯)を搭載したモデルもありました。当時のドイツの印刷物には、まだまだフラクトゥールが使われており、文書はフラクトゥールで印字すべきだという考えが強かったのです。ただ、等幅のフラクトゥールというのは非常に読みにくく、タイプライターには不向きな活字だったようです。