古語辞典でみる和歌

第4回 「秋の田の…」

2014年9月9日

秋の田の穂向きの寄れる片寄りに君に寄りなな言痛(こちた)くありとも

出典

万葉・二・一一四

秋の田の稲の穂が一つの方向に片寄って並んでいるように、ただもうあの人に寄り添ってしまいたいことだ。人のうわさがどんなにうるさくても。

品詞分解

「なな」=完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」+願望の終助詞「な」

(『三省堂 全訳読解古語辞典』第四版「なな」)


◆関連情報

古典では「な」の識別はやや難しく、定期試験や入試でもたびたび問われる頻出事項となっています。

『三省堂 全訳読解古語辞典』では、「な」を引くと、「な」を文法的に見分けるためのポイントを示した「『な』の識別表」が付いています(851p)。

さらに、「終助詞の『な』」の用法の識別については、「な」の「補説」(852p)で以下のように解説され、主語によって用法を見分ける手助けとなります。

[ポイント]終助詞「な」の主な用法の識別には、前の語の活用形や主語の人称が手がかりになる。①《意志・願望》(…たい。…よう。) ②《勧誘》(…うよ。…ようよ。) ③《他への願望》(…てほしい。)は奈良時代にのみ用いられ、活用語の未然形に接続する。①《意志・願望》の「な」は、主語が一人称となる。②《勧誘》の「な」は、主語は一人称複数、③《他への願望》の「な」は、主語が二人称や三人称となる。④の禁止を表す「な」は、動詞や動詞型活用の助動詞の終止形に付く。⑤《詠嘆・感動》の「な」は、文を言い切ったところや引用の「と」に付き、「な」を取り除いても文の意味はほとんど変わらない。

筆者プロフィール

古語辞典編集部

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