しなの鉄道の屋代(やしろ)駅に降り立ち、駅を背にして歩を進めると、きれいな商店が軒を連ねています。その一角を占める「屋代西沢書店」でお買い物をすると、ほのぼのとした味わいを持つ版画と方言が印刷されたオリジナルの紙袋【写真1】に商品を入れてもらえます。
版画に添えられた方言を、あらためて見てみましょう。
「ぎんだれ猫・へっつい猫」=[かまどのそばをうろうろしている寒がり屋のネコ 目やにを出したうすぎたないネコ]
「本屋で本買わず」=[本屋で本を買おう]
「月みにいかず 花みにいかず」=[月を見に行こう、花を見に行こう]
「づくなし づくだせ」=[無精者め やる気を出せ]
「おらやだ われいけ」=[俺はいやだ お前行け]
「もうらしこんだし」=[かわいそうなことだなあ]
「おじょここくな」=[生意気なことを言うな]
版画の作者は、地元・千曲(ちくま)市出身の「板画家」森貘郎(もり・ばくろう)氏です。地元の方言をこよなく愛する森氏には、『オラホの憲法9条』(川辺書林〈長野市〉 2005.5)という作品もあります。ページをめくると作品に添えられている条文は、
この国の人間(もん)は、これっきし
なにが あらずが よその国と 戦争
やったり よその国の 人間(もん)を
殺したり しねだしど。
屋代西沢書店の明るい店内を見回すと、森氏の著作はもちろん、郷土出版物が充実していることがわかります。『ちょうま』『屋代』といった郷土雑誌のバックナンバーも手に取って見ることができ、郷土を愛する好学の風土がしのばれます。今回ご紹介の紙袋は、そうした文化活動を支援するお店ならではのオリジナル袋と言えるでしょう。
惜しいことには、在庫が少なくなっているとのこと(貴重な一枚を、今回いただいてしまいました)。
森氏のファンと信州弁の愛好者は、屋代西沢書店へ急ぎましょう。