鶯のなけどもいまだふる雪に杉の葉しろき逢坂(あふさか)の山
出典
新古今・春上・一八・後鳥羽院(ごとばゐん)
訳
春を告げるうぐいすが鳴いているのに、いまだに降る雪のために、杉の葉が真っ白な逢坂山であるよ。
参考
「逢坂山」は近江国の歌枕。いまの滋賀県大津市西部の山。本歌は、「梅が枝に来ゐるうぐひす春かけて鳴けどもいまだ雪は降りつつ」〈古今・春上・五〉[訳]梅の枝に来てずっととまっているうぐいすが春を待ちこがれて鳴くけれども、まだ雪が降りしきっているよ。
(『三省堂 全訳読解古語辞典 第四版』「うぐひすの…」)
◆参考情報
今回は、「逢坂山」という歌枕が出てくる歌を取り上げました。『三省堂 全訳読解古語辞典』で「逢坂山」を引くと、「山城(やましろ)・近江(おうみ)両国の境の山。いまの京都府と滋賀県との境にある。関所が設けられたことから「関山」とも呼ばれた。和歌では同音の「逢ふ」とかけて用いられることが多い。」とあります。
「鶯の…」の歌の詞書には「和歌所にて、関路鶯といふことを」とあり、逢坂山が歌題の「関路」を表していることになります。