天の川紅葉(もみぢ)を橋にわたせばやたなばたつめの秋をしも待つ
出典
古今・秋上・一七五
訳
天の川に紅葉の葉が散ったのを水に浮かべて、橋のように渡すからなのだろうか、おり姫は恋人の訪れるという秋をひとしお待っていることよ。
(『三省堂 全訳読解古語辞典』「たなばたつめ」)
◆参考情報
『三省堂 全訳読解古語辞典』で「たなばた【棚機・七夕】」を引くと、[参考]に以下のような解説があります。
「たなばた」は本来織機の意。「たな」は水辺に渡した棚のことで、そこで機を織って神を迎えるという日本の古い習慣があったらしい。一方、中国漢代の伝説では、牛飼いの妻であった織女が仕事を怠けたために二人は天の川の両岸に引き離され、七月七日かささぎの翼で渡した橋の上を織女が渡って逢瀬(おうせ)をとげるという。この伝説は七世紀後半日本にもたらされ、日本の古い習慣と結びついた。
なお、中国の伝説では織女のほうが牽牛を訪れるという形になっていますが、日本では、「男性が女性のところに通う」という昔の結婚形態の影響により、「牽牛が天の川を渡って織女に逢いに行く」というイメージの和歌が多く詠まれました。
逢いに行く方法には、今回の「紅葉の橋を渡る」のほかに、舟で天の川を渡る、かささぎの橋を渡る、徒歩で渡るなどがあり、いずれもロマンチックです。
七夕についての詳しい伝承は、『三省堂 全訳読解古語辞典』「あまのがは」「きかうでん(乞巧奠)」などのコラムをご覧ください。