古語辞典でみる和歌

第22回 「春の夜の…」

2016年3月8日

春の夜の闇(やみ)はあやなし梅の花色こそ見えね香(か)やはかくるる

出典

古今・春上・四一・凡河内躬恒(おほしかふちのみつね)

(闇とはあらゆるものをすっぽりと隠すものだが)春の夜の闇はどうも筋の通らないことをしている。梅の花の、色こそ見えはしないが、その香は隠れているか、いや隠れていないではないか。

技法

二句切れ。〔注〕「色こそ見えね」の「こそ」は強調の係助詞。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形。係り結びの形で逆接的に下へ続く。「香やはかくるる」の「やは」は、反語の係助詞。「かくるる」は結びで、動ラ下二「かくる」の連体形。

参考

「春の夜の闇」を擬人化し、闇はあらゆるものを隠すものなのに、梅の香は隠れないじゃないか、と笑うことによって、梅の香の高さを詠んだのである。

(『三省堂 全訳読解古語辞典〔第四版〕』「はるのよの・・・」)

筆者プロフィール

古語辞典編集部

編集部から

弊社では、昨年春より募集して参りました「三省堂 高校生創作和歌コンテスト」の入賞作品を、このほど発表いたしました。このたびは、多くのご応募を賜り、誠にありがとうございました。ご応募くださった高校生の皆様、そしてご高配くださいました先生方に、心よりお礼を申し上げます。入賞作品の詳細は、以下のアドレスから御覧頂けます。

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