春の夜の闇(やみ)はあやなし梅の花色こそ見えね香(か)やはかくるる
出典
古今・春上・四一・凡河内躬恒(おほしかふちのみつね)
訳
(闇とはあらゆるものをすっぽりと隠すものだが)春の夜の闇はどうも筋の通らないことをしている。梅の花の、色こそ見えはしないが、その香は隠れているか、いや隠れていないではないか。
技法
二句切れ。〔注〕「色こそ見えね」の「こそ」は強調の係助詞。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形。係り結びの形で逆接的に下へ続く。「香やはかくるる」の「やは」は、反語の係助詞。「かくるる」は結びで、動ラ下二「かくる」の連体形。
参考
「春の夜の闇」を擬人化し、闇はあらゆるものを隠すものなのに、梅の香は隠れないじゃないか、と笑うことによって、梅の香の高さを詠んだのである。
(『三省堂 全訳読解古語辞典〔第四版〕』「はるのよの・・・」)