−新項目と行数削減項目に込められた思い−
新しい辞典であればだれでも期待するのが新語や新語義などの新項目であろう。『ウィズダム英和辞典』(第2版)でも多くの新項目を加えてある。それらの中には,目覚ましい技術革新によって生み出された語〔file sharing, organic electroluminescence, phishing, wiki, etc.〕や時代の要請・変化の中で生まれてきた語〔civil union, fat tax, etc.〕などがあるのは当然であるが,これまでの辞書記述に漏れていたものも存在する。
目覚まし時計の広告等を見れば必ず出てくるsnooze(→(名) 2)などは,あまりにも身近すぎて漏れていた日常生活語彙のひとつであろう。また,直接話法とともに用いられるlike(→(前) 4)やbe(→(自) 1c)はくだけた日常会話,特に若者の間ではしばしば現れる用法であるにもかかわらず,これまで辞書であまり取り上げられることのなかった語法である。さらに,earlierは,earlyの比較級ということで見出し語としては無視されていたが,many及びmuchの比較級であるmoreとともに,比較級の頻度が原級のそれの2分の1を超えるほど,珍しく有用度の高い比較級のひとつである。agoやbeforeとの使い分けの問題もあり,外国語として英語を学ぶ者であればだれもが身につけておきたい用法で,第2版で新たに加えた項目である。
新項目をどんどん増やしてゆけば,当然スペースはふくらむ一方で辞書はパンクしてしまう。必要な記述を増やす一方で,古くなったりあまり使われなくなった語義・用法に当てられた行を削ってゆかなければならない。しかし,編者の立場としては,この作業は大変気を遣う。というのは,辞書に載っていないということは,「その用法はない」ということをユーザーにメッセージとして発信しているととられかねないし,「他の辞書にあるのにこの辞書にないのは,きっとこの辞書が劣っているからだ」といった辞書評価の基準として使われかねないからである。『ウィズダム英和辞典』では,古くなったりあまり使われなくなった語義・用法の場合,即座に削除するのではなく,ユーザーがその語義・用法に遭遇した際を想定して,行数の許す限りその語義・用法を今後使用する際の指針を示すようにした。下に挙げる成句make it a rule to do はその一例である。