この全国地図(上画像)は、東京都内のアンテナショップと、都道府県会館を訪問して、方言が使用されているパンフレットの件数を色分けによって比較したものです。1部のパンフレットにいくつかの方言が掲載されていても、1件と数えました。そのパンフレットにどんな方言が使用されているか詳しい説明は、またの機会にします。北海道などはパンフレットは0件ですが、食品には使われています。アンテナショップも都道府県会館もない県はありませんでした。10件以上は、多い順に沖縄、福島、山形、宮城、鹿児島、岐阜です。赤とピンクは、件数が多い地域を示していて、東北、中部・北陸、九州南部・沖縄が固まりに見えます。方言グッズを入れると、近畿地方も多くなります。都道府県会館には、分室も含めて44の都道府県が入っています。たいてい誰かが訪問者に応対をしているか、電話で話しています。耳をすますと、全国各地の方言が聞けます。
東京都内のアンテナショップで、四国を一巡りしてみましょう。高知県のアンテナショップには、「歩きよったら考えも変わるきね」というシールが店頭に置かれています。香川県には、「豚汁たべてんまい」「香川の酒さぬきようまい」。さらに、「泣きたかったら、泣きゃーええがー」というシールもあります。徳島県のシールは「おまはんだけでないんじょ」、愛媛県は「焦らんでええけん」などがあって、四国お遍路をして救われたような気分になります。人生のアドバイスを方言でしてくれるので、特に同県出身者は、ホッと胸のつかえがおりることでしょう。店員さんも方言で応対をしてくれます。
愛媛県のパンフレットに「めちゃ」(めっちゃではない)、山口県では、いりこだしの素に「ぶちうまい」などの新方言も見られます。
方言によって地方色を強調している県は、「ふるさと検定試験」にも熱心に取り組んでいて、ショップで検定試験問題を見ることができます。例えば、秋田県では、秋田ふるさと検定実行委員会というのがあって、平成20年度は11月16日(日)に第2回2級と第3回3級を実施するようです。1級については、平成21年度の実施だそうです。その中の方言の問題をご紹介します。(以下、本文通り)
【生活文化】 身体の部分をあらわす秋田方言はどれか。
1.ちょす 2.なじき 3.ぼだ 4.しが
さて、正解はどれでしょう。秋田の友だちがいたら、正解を聞いてください。
方言資料の収集を目的にして、ショップ巡りをすると、まず、麺類がたくさんたまっていきます。つぎに、甘いお饅頭やお菓子がたまります。方言がそばやラーメン、お菓子の商品名だったり、説明が方言だったりするので、買ってしまうと当分の間、各地の麺を食べ続けることとなり、冷蔵庫も賞味期限付きのお饅頭とお菓子でいっぱいになります。おなかはいっぱいになっても、おさいふはからっぽになって、「言語経済学」とはかくもつらい研究なのです。
パンフレット集めに明海大学外国語学部4年生の早坂直記さんが筆者に同行して助手を務めてくれました。