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曲のエピソード
1980年にカリフォルニア州ロサンゼルスで結成された女性バンドのバングルスは、デビュー当初は鳴かず飛ばずだったものの、プリンス作の「Manic Monday」(1986年に全米No.2を記録する大ヒット)でいきなりブレイクした。そして遂に「Walk Like An Egyptian」(1986)で全米チャートを制覇するのである(4週間にわたって全米首位の座に君臨)。しかしながら、当時の世間での受け止められ方を反芻してみると、同曲はいわゆるコミック・ソング(英語でいうところのnovelty song)の範疇に属していたように思う。彼女たちが再び全米チャートの上位に返り咲くのは、サイモン&ガーファンクルのカヴァー「Hazy Shade of Winter(邦題:冬の散歩道)」をリリースした時である。同カヴァーは全米チャートでNo.2まで登り詰めた。
以降、「In Your Room」(全米No.5)という大ヒットを放ち、遂にはこの「Eternal Flame」で2回目の全米No.1ヒットを手中に収めるのだ。アルバム『EVERYTHING』(1988)からシングル・カットされ、大ヒットしたのは翌1989年のことだった。筆者の音楽仲間――とりわけ男性――には、バングルスの曲の中でこれが最も好き、という御仁が少なくない。歌詞もメロディも切なくて、同性が聴いても胸が締め付けられる。なお、日本では時代を反映してか、当時、CDシングルのみがリリースされた。
バングルスは1989年にいったん解散するものの、1999年から活動を再開しており、約10年の歳月を経て復活。ガールズ・バンドがただでさえ少ないのだから、彼女たちにはいつまでも活躍して欲しいものである。当然ながら、ライヴではこの曲を今でも演奏し続けていることであろう。
曲の要旨
瞳を閉じて。私の鼓動を感じてくれているの? あなたも私と同じ気持ちでいてくれているのかしら? それともこれはただの夢なの? 私のあなたへの思いは永遠なのかしら? あなたが私の名前を口にしてくれれば、雨が降っていてもそこに一筋の光が射し込むわ。そうすれば、胸の中のもやもやとした気分も晴れるのよ。あなたを思うこの気持ちを失いたくないの。どうかあなたを愛する気持ちが永遠でありますように。
1988年の主な出来事
アメリカ: | 共和党候補のジョージ・ブッシュ(George Herbert Walker Bush/1924-)が大統領選で当選。 |
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日本: | 青函トンネルが開業する。 |
世界: | イラン・イラク戦争が停戦。 |
1988年の主なヒット曲
The Way You Make Me Feel/マイケル・ジャクソン
Seasons Change/エクスポゼ
Wishing Well/テレンス・トレント・ダービー
One More Try/ジョージ・マイケル
Roll With It/スティーヴ・ウィンウッド
Eternal Flameのキーワード&フレーズ
(a) Do you feel the same
(b) an eternal flame
(c) say one’s name
それにしてもガールズ・バンドが少ない。筆者が高校時代の時にバンドをやっていたクラスメイトがいたのだが、キーボード担当の彼女はバンドの“紅一点”であり、他の楽器は全て他校の男子生徒が担っていた。彼女に請われてライヴを観に行ったことがあるのだが、出演バンドのほとんどが男子生徒の構成によるもので、結局のところ、ステージに立った女性は筆者のクラスメイトだけだったのである。彼女はエレクトーン教室に通っており、後に音大に進んだのだが、バンドでの扱いは“マスコット(死語?)”のようなものだった。恐らく本人も不本意だっただろう。
そうした経験があるからか、ガールズ・バンドの活躍は無条件に嬉しい。バングルスが10年の歳月を経て復活したと知った時にわけもなく嬉しくなったのには、そうした体験があるからだ。また、ガールズ・バンドを無条件に応援したくなるのも、恐らく高校時代のクラスメイトがバンドの紅一点だったからだろう、と自分なりに分析している。
「Walk Like An Egiptian」が全米No.1の座を射止めた時、遂にバングルスもやったか、と思ったと同時に、同曲を最後に下降線の一途を辿らなければいいが……と危惧したことが今も忘れられない。が、彼女たちは実力派としてミュージック・シーンにこの曲と共に戻ってきてくれた。PVの幻想的な映像も未だに忘れ難い。
(a)は洋楽のラヴ・ソングに頻出する言い回しで、言い換えるなら次のようになるだろうか。
♪Do you love me like I do?
「あなたも私と同じ気持ちでいてくれる?」の「同じ気持ち」とは、相手を愛している気持ちに外ならないから。その後に「私は夢を見ているだけなの?=私の思い込みなの?」と続くことから、この曲の主人公の女性は相手が自分を愛しているかどうか、ということに自信を持てないでいる。何とも切ないフレーズだ。
タイトルにもなっている(b)は、「いつまでも消えない炎」すなわち「永遠の愛」であろう。筆者は常々この世に「永遠」など存在しないと思っているのだが、異性/同性に限らず、相手を想う気持ちが生涯ずっと続く、ということはあると思う。日本語でも「恋の炎」などという言い方をするが、メラメラと燃え上がる炎が恋愛に相通ずるのは洋の東西を問わず同じものらしい。英語と日本語には、こうした似通った言い回しが少なくなく、それを発見するたびに嬉しくなってしまう。
(c)もまた、洋楽ナンバーのラヴ・ソングに頻繁にみられるフレーズだが、直訳すると無粋な言い回しになってしまう。「私(僕)の名前を口にして」というのが何故に相手の気持ちを確認する術[すべ]になるのか、というのが、東洋人には今ひとつ解りにくい。これと似たような表現に、次のようなフレーズがある。
♪Call my name.
筆者なりに分析すると、愛する相手が自分の名前を口にしてくれるのは、自分を想ってくれている証左のひとつではないか、と。例えば別れや不倫の曲で、眠っている間に相手が自分以外の異性の名前を口にして浮気を察知する、という内容の歌詞がしばし見受けられるが、西洋では相手の名前を口にする=その相手を想っている、という概念があるのだと感じさせられる。(c)を愛する相手に求めるこの曲の主人公は、恐らくその行為によって相手の気持ちを確かめたいのではないだろうか。切ない女心の顕れである。
思うに、バングルスはこの曲によって大人の女性バンドへと変身を遂げた気がする。アダルト・コンテンポラリー・チャートでも2週間にわたってNo.1の座に就き、その人気の座を揺るぎないものにした。筆者にとっては、彼女たちの楽曲の中でもピカイチである。今なお色褪せない珠玉のラヴ・ソングだ。