10分でわかるカタカナ語

第41回 インチ

2006年4月12日

どういう意味?

ヤードポンド法の「長さの単位」で、1インチは約2.54cmに相当します。

もう少し詳しく教えて

インチ(inch)は、長さを示す単位の一種です。ヤードポンド法の単位で、単位記号は「in」または「"」、漢字では「吋」と表します。1インチ=1/12フィート(0.08333フィート)=1/36ヤード(0.02778ヤード)です。メートル法に換算すると、1インチは約2.54cm(25.4mm)です。

どんな時に登場する言葉?

ICやLSIなどをはじめとする電子機器、フロッピーディスクなどの電子媒体、テレビ受像器やディスプレーモニター、自転車の車輪、航空機関連の単位として用いられています。また、英語圏の翻訳小説などのなかでも、例えば「彼女は身長5フィート6インチ」というように見られます。

どんな経緯でこの語を使うように?

もともと英語圏ではヤード法に基づき、「インチ」「フィート」「ヤード」を長さの単位に使用していました。日本では、1958年に尺貫法からメートル法に切り換えられましたが、ヤード法が基準にされたことはありません。明治時代の殖産興業で流入した工業機械などはイギリス製のヤード法のものやフランス製のメートル法のものなど混在していました。日本は公式には1885年にメートル条約に加盟しましたが、実際の生活には日本独自の尺貫法が用いられていました。第二次世界大戦後、名実ともにメートル法を使うようになりましたが、歴史的にヤード法で規格されてきた工業機械や製品、今日、特にコンピューター関連の精密機器製品にインチが用いられるため、互換性などから、この分野での実際の設計・製造の単位としてインチが使用されます。

インチの使い方を実例で教えて!

日本ではインチは正式表記ではありません

航空機や、電子部品・電子媒体といったコンピューター関連製品、ディスプレーモニターやテレビなど、主にアメリカで開発・商品化されたものは、寸法がインチで採られています。互換性や慣例などから、日本で設計・製造される場合もインチで採寸します。ところが、「計量法」によりメートル法を基準とする日本では、商法上、正式な商取引にインチ表示が認められません。そこで、25.4mmの倍数で表示されたり、テレビやディスプレーモニターのように「14インチ」は「14型」、「21インチ」は「21型」といった型式表記されています。

インチねじ

ねじの規格はISOに沿っていますが、ISOの規格よりねじ山のピッチが粗いものがあり、これをインチねじと呼びます。日本で生産されるものとしては、3.5インチフロッピーディスクドライブ固定用のねじが代表的です。ねじ山のピッチが4mm以上になれば、ISO規格との互換性があります。

自転車の規格

一般に自転車の大きさを「16インチ」とか「20インチ」などと呼んで区別しています。タイヤを嵌(は)めた状態の車輪(ホイール)の直径をもとにした俗称で、いわゆるママちゃりや子ども用自転車のような一般車に用いられます。もっともタイヤ業界によると自転車の車輪用タイヤの種類は40種類以上あるそうです。国によって規格が微妙に異なるため、今日では、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)にそった表記が併記されます。マウンテンバイクやクロスバイク、ロードレーサーといったスポーツタイプの自転車はフレームサイズによってサイズ分けし、日本ではセンチメートルかM、Lなどの分類で表記されています。

レターパッドのサイズ

洋紙の規格はインチで表記されていることがあります。ワープロなどで文書スタイルウィンドーを開くと用紙の指定があり、そこに「リーガル」「エグゼクティブ」などのようにインチ表示されているものがあります。日本ではほとんど使われないサイズで、イギリスやアメリカ製のレターパッドなどがこのサイズです。文書スタイルの用紙選択肢にあるのは、日常的にインチが使われるアメリカでワープロのプログラムが開発された名残でしょう。ちなみに、洋紙に分類される紙のなかで、A4版などのようにA○版というのは、A0からA10まであり、JIS規格のひとつで、もともとドイツの工業規格を採用したものです。B5版などのようにB○版というのは、JIS規格のひとつではありますが、もともと江戸時代の美濃紙のサイズをもとにした日本独自の規格です。これらはふつうセンチメートルで規格されます。

言い換えたい場合は?

インチは単位なので言い換えられません。「吋」という漢字をあてたり、メートル法あるいはフィートなどに換算することはできます。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

ヤードポンド法とメートル法 ヤードポンド法(yard-pound)は、長さの単位にヤード(yard)、質量の単位にポンド(pound)、温度の単位に華氏温度(°F)などを用いる単位系です。これに対し、日本ではフランス発祥のメートル法に基づく国際単位系SIが主に用いられ、長さにはメートル((フランス) mètre)、質量にはグラム((フランス) kilogramme)、温度に摂氏温度(℃)を用いています。ヤードポンド法はイギリスやイギリスの植民地・連邦国などで主に用いられていましたが、アメリカでは1992年に、本家(?)のイギリスでも1995年以降メートル法に公的には変更しました。しかしながら、人々の実際の生活で長さなど基準となる単位を急に変えるのは難しく、まだまだヤードポンド法が健在です。ヤードポンド法は、そのほか、ミャンマー、リベリアで用いられています。

国際単位系SI((フランス) Système international d'unités) 「SI」そのまま「エスアイ」と読む「国際単位系」のことです。メートル法に基づいた単位系の統一を目的として、1960年に国際度量衡総会で採択された単位系で、国際的に広く用いられ、日本でも計量法などに採用されています。ちなみにメートル法は十進法で、定義は「光が真空中を、1 秒の2 億 9979 万 2458 分の 1 の時間に進む長さを 1 mとする」となっています。

筆者プロフィール

三省堂編修所

編集部から

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