鈴木マキコ(夏石鈴子)さんに聞く、新明解国語辞典の楽しみ方

新明解国語辞典を読むために その3 すてきな( )物件 第2回

筆者:
2021年10月7日

前回からのつづき)

p.141「うりとばす【売(り)飛(ば)す】」

蔵書とか?

p.1455「ほりだしもの【掘(り)出(し)物】」

古書とか?

p.70「いけにえ【生(け)贄】」

ひー、こわいです。でも、これが「人間(けだもの)」の順でなくて良かったと思うことにします。

p.69「いぐい【居食(い)】」
p.589「さきぼそり【先細り】」

それは嫌な予測だ。

p.1221「のらくら」

たまたま、その日だけのらくらしていたのではなくて、なんだか連続してのらくらしているということだ。うーん、草むしりをするとか、風呂場のそうじとか何かして下さい。

p.768「しらはのやがたつ【白羽の矢が立つ】」

まるで正反対です。急に言い直してもだめ。

p.1454「ほめちぎる【褒(め)ちぎる・誉(め)ちぎる】」

ところが、全然恥ずかしがらないで「もっと何か言わないかな」と、次の言葉を平気な顔で待つ人もいます。わたしの研究によると、こういう人はもう人間ではなくなって「妖怪ほめられたい」になっている。

p.1606「ようかい【妖怪】」

この手の妖怪で、「妖怪おれがー」というのもいる。

p.1418-1419「へんげ【変化】」

「妖怪ほめられたい」「妖怪おれがー」ですが、この妖怪は、変化などという立派なものは見せられないけれど、「いい気になる」「他人の仕事を自分のいいように使う」「礼儀知らず」という態度が特徴です。こういう態度は人として不思議なので、もうこれは人間ではなく妖怪なのだ、と気が付きます。

p.1604「よいしょ」

あはは、「世代」。

p.1604「よいとまけ」

美輪明宏さんに、「この見出し、あります」と、お伝えしたくなる。

(つづく)

 

「こだわる」追記

すてきな( )物件で、「こだわる」をご紹介しました。用例に「カボチャにこだわり続けた画家」とあり、「これは誰だろうと思いました」というメールを、「新解さん観察人」の方からいただきました。この「新解さん観察人」というのは、①実際にはお目にかかったことはない②でも、『新解さんの謎』刊行から、ずっと新明解国語辞典についてやり取りをさせていただいている間柄で「知人」とも「友人」とも違う新しいジャンルの大事な方のことです。

わたしは「カボチャ」だし、「こだわり続けた」と文章が過去形なので、「これは武者小路実篤だと思います。本当は作家なのに、新解さんは画家だと思っているのですね」と返信しました。

ところが、この後にわたしの心の担当編集者(実際には担当をしてもらえなかったけれど、仕事を含めて困り事をいつも相談する編集者)から、「カボチャのところで草間彌生さんの顔と大きな水玉のカボチャが目の前に現れました」と、メールをもらいました。

え、これって武者小路実篤ではなくて、草間彌生なの? あらま。わたしが思うに、草間彌生は水玉にこだわりがあり、その水玉がぞろぞろと移動して大きなカボチャに乗っているのではないでしょうか。はぁ、確かめに行かないといけない。でも、この間の台風でこの有名なカボチャは流されてしまったと報道があった。今はカボチャはどうなっているのか。今日も台風です。そうですね、直島への確認調査も「新解さん観察人」との初の面会も、コロナの後の楽しみに(わくわくしながら)とっておくことにします。

 

筆者プロフィール

鈴木マキコ ( すずき・まきこ)

作家・新解さん友の会会長
1963年東京生まれ。上智大学短期大学部英語学科卒業。97年、「夏石鈴子」のペンネームで『バイブを買いに』(角川文庫)を発表。エッセイ集に『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』(以上、角川文庫)『虹色ドロップ』(ポプラ社)、小説に『いらっしゃいませ』『愛情日誌』(以上、角川文庫)『夏の力道山』(筑摩書房)など。短編集『逆襲、にっぽんの明るい奥さま』(小学館文庫)は、盛岡さわや書店主催の「さわベス2017」文庫編1位に選ばれた。近著に小説『おめでたい女』(小学館)。

 

編集部から

『新明解国語辞典』の略称は「新明国」。実際に三省堂社内では長くそのように呼び慣わしています。しかし、1996年に刊行されベストセラーとなった赤瀬川原平さんの『新解さんの謎』(文藝春秋刊)以来、世の中では「新解さん」という呼び名が大きく広まりました。その『新解さんの謎』に「SM君」として登場し、この本の誕生のきっかけとなったのが、鈴木マキコさん。鈴木さんは中学生の時に出会って以来、長く『新明解国語辞典』を引き続け、夏石鈴子として『新解さんの読み方』『新解さんリターンズ』を執筆、また「新解さん友の会」会長としての活動も続け、第八版が出た直後には早速「文春オンライン」に記事を書いてくださいました。読者と版元というそれぞれの立場から、これまでなかなかお話しする機会が持ちづらいことがありましたが、ぜひ一度お話しをうかがいたく、このたびお声掛けし、対談を引き受けていただきました。「新解さん」誕生のきっかけ、その読み方のコツ、楽しみ方、「新解さん友の会」とは何か、赤瀬川原平さんとの出会い等々、3回に分けて対談を掲載いたしました。その後、鈴木さん自身による「新解さん」の解説記事を掲載しております。ひきつづき、どうぞお楽しみください。