国語辞典入門:国語辞典の選び方
2010年 1月 6日 水曜日 筆者: 飯間 浩明第0回 はじめに
私はこれから、「国語辞典はどう選んだらいいのか」、そして、「国語辞典はどう使ったらいいのか」ということについて、できるだけくわしくお話しするつもりです。
こう宣言すると、読者からはいろいろな反応があると思います。じっくり聞いてやろうという人もいるかもしれません。一方、うんちくはいらない、今日にでも辞書を買いに行くんだから、だいたいのところを教えてくれという声も聞こえてきそうです。
それでは――というわけで、まずは、お急ぎの読者のために、私の言いたいことを一言でまとめてしまいましょう。
国語辞典のいちばん理想的な選び方は、1冊ではなく、性格の違ういくつかの辞書をそろえることです。また、いちばん理想的な使い方は、それらの辞書を、つねに引き比べながら使うことです。何も特別なことではありません。
もっとも、こんな説明では、読者は必ずしも納得しないかもしれません。次のような不満がきっと出てくるはずです。
いくつかの辞書をそろえろと言われても、そう何冊も買えるもんじゃない。辞書を引き比べることは大切かもしれないが、理想論だ。自分は、とりあえず、ほかに比べて語数も多く、誤りも少ない辞書が1冊あればいい。その辞書の名前を教えてくれ。それを買いに行こうじゃないか。
まあ、お待ちください。そういう「ランキング第1位」の国語辞典は存在しません。かりに、ここにきわめて優れた辞書があったとして、それを読者に推薦したところで、肝心な時に、よりによってその辞書だけが役に立たないということだってありえます。
「第1位」の国語辞典というものがないからこそ、私は、性格の違ういくつかの辞書をそろえ、それを引き比べるべきだと主張するのです。
基本的なところから考えよう
さて、そうなると、話はやはり長くならざるをえません。性格の違う国語辞典を選ぶといっても、それぞれの辞書の違いなんて、どこを見れば分かるのでしょうか。説明には少々時間がかかりそうです。国語辞典と実用辞典、漢字辞典などの違いも問題になります。ひとつ、基本的なところから考えてみましょう。
また、それぞれに個性のある国語辞典をそろえたとしても、そもそも引き方が分からなければ、それぞれの長所を生かすことはできません。ちょうど、多機能のカメラを、いつも自動ピントや自動露出でしか撮影しないようなものです。カメラの機能ならぬ、国語辞典に備わっている機能の使い方についても触れたいところです。
あるいは、国語辞典をどんなときに使えばいいかという話も必要です。知らないことばや、不正確な漢字を確かめるだけでは、辞書を十分に使っているとはいえません。カメラのたとえで言えば、旅行や年中行事のスナップしか撮らないようなものです。国語辞典にはまだまだ活用法があります。
そのほか、国語辞典はどうやって作るのか、だれが作るのかといった話も、読者は知っておいて損はないはずです。さらには、国語辞典の将来はどうなるのか、などといったことにも言及できればいいと思います。
私は『三省堂国語辞典』の編集委員として辞書作りにたずさわっており、その経験から、辞書について一般に言われていることに疑問を差し挟みたいこともあります。私の話は、国語辞典についての説明というだけでなく、問題提起を含むものになるでしょう。
国語辞典の初心者とともに、日ごろかなり辞書を使う方にも、ぜひおつき合いいただければと思います。
◆連載を続けてお読みになる方は⇒「国語辞典入門」アーカイブ
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◆飯間先生のもう一つの連載は⇒「『三省堂国語辞典』のすすめ」目次へ
◆飯間先生の記事はここにも⇒「三省堂WebDictionary」ことばパティオ第8回「「串刺し」に堪える語釈でなければならない」
筆者プロフィール
飯間浩明(いいま・ひろあき)
早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)
【編集部から】
これまで「『三省堂国語辞典』のすすめ」をご執筆くださった飯間浩明先生に「国語辞典の知っているようで知らないことを」とリクエストし、「『サンコク』のすすめ」が100回を迎えるのを機に、日本語のいろいろな辞典の話を展開していただくことになりました。
辞典はどれも同じじゃありません。国語辞典選びのヒントにもなり、国語辞典遊びの世界へも導いてくれる「国語辞典入門」の始まりです。










































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2007年









