『英語談話表現辞典』覚え書き

(18) つなぎ語:相手の発言の是認と否定

筆者:
2010年4月1日

前回は相手の発言を受けてそこからさらに話を続けていくときに用いられるbutやwellなどを取り上げました。今回は相手の話の内容にもう少し踏み込んだ形で話題をつないでいく語句で、しかも文頭に現れる特徴的なものをいくつか考えてみます。

相手の発言を是認したあと、そのまま終わらずに、理由や説明を付け加えることはよくあります。たとえば、That’s it.は相手の言い分をそのまま認めることを表します。次の第1例はThat’s it.だけで終わっていますが、第2例はそれにかかわる新しい情報を付加しています。次は本辞典からの引用です。

2 〈相手の発言を受けて〉そうなんです, その通り:“You mean he stole all that money?” “That’s it.” 「彼がそのお金を全部盗んだとおっしゃるのですね?」「その通りです」 “My husband snores every night.” “That’s it. So does my husband. I can’t sleep.” 「夫は毎晩いびきをかくのよ」「そうそう, うちもなの. 眠れないわ」.

That’s it.はこれ以上の言い訳などを受け付けないという強い調子を表す、打ち切り表現にも用いられます。

6 〈相手の発言に我慢できなくなって〉もうおしまい:《恋人同士の会話》 “I saw you kissing Cathy yesterday.” “No. You took me for someone else.” “That’s it. I can’t stand it any longer.” 「昨日あなたがキャシーとキスしているところを見たわよ」「違うよ. 君は僕と誰かを見間違えたんだよ」「もうおしまいよ. 我慢できないわ」.

逆に、相手の発言を否定することもよくあります。典型例としてof courseをあげておきます。(用例は三省堂コーパスからです)

“It was not there one hour ago.” “Of course it was. I put it there this morning when you were playing football.”「1時間前にはなかったよ」「そんなはずはない。だって朝君がサッカーをしているときぼくが置いたんだから」

否定文を受けて、of courseを伴った肯定文で相手の言ったことを否定し、その理由を述べています。

また、not likelyは文字通りの意味では「おそらくそんなことはないでしょう」ほどの柔らかい否定ですが、疑問文や要請文などに対してはnoよりも強い拒絶を表すことがあります。

2 〈勧誘・申し出などに対して〉お断りします, 絶対いやです(◆断る理由が続くことが多い) “Are you going to the dance tonight?” “Not likely! It’ll just be another boring party for the old.” 「今晩のダンスパーティに行くの?」「絶対行かない. どうせまたお年寄り向けの退屈なパーティだろうから」 “Would you sit down?” “Not likely. This chair is dangerous.” 「(このイスに)お座りください」「お断りします. 壊れそうなので」.

いずれもnot likelyのあとで断りの理由を述べています。

相手の言い分を条件つきで認める表現にas long asがあります。形式は従属節ですが、条件が守られれば言い分を認めるという含みで用います。

5 〈話し手側の条件だけを提示し, 許可を与えて〉…しさえすればいいよ:《母親が子どもに》 “I want to go out and play with my friends.” “As long as you come in when it starts getting dark.” 「外で友だちと遊びたいんだけれど」「夕方になったら帰ってくるのであればいいわよ」.

さらに、as long asは、同じく条件を守られればという含みで、次のように冗談や皮肉にも用いられます。

6 …ならばそうですね, …ならばどうぞ, …ならね(◆仕方なく同意する含みがある. しばしば冗談や皮肉として用いられる):“Can I come? Me, too. Me, too.” “As long as you don’t talk.” 「私も行っていい? ねえねえ」「しゃべらないでいてくれたらね」.

また、必ずしも文頭に用いられるわけではありませんが、最終判断を相手に任せる言い方としてif you likeがあります。

3 〈申し出・提案などを受けて〉よろしければどうぞ, いいですよ, まあどうぞ:“What would you like to drink?” “I would like some tea, if you like.” 「何か飲み物はいかがですか」「よろしければお茶をいただけますか?」 “Shall we stop working now?” “If you like.” 「そろそろ仕事は終わりにしようか」「(あなたがそうしたければ)いいですよ」 “Perhaps you’d better not come with me.” “Oh, well, if you like.” 「たぶん君は僕と一緒に来ない方がいいよ」「うん, わかった. (君がそう言うなら)いいよ」.

相手に判断を任せるということはていねい表現にもつながります。上の第1例では遠慮した言い方になっています。

筆者プロフィール

内田 聖二 ( うちだ・せいじ)

奈良女子大学教授

専門は英語学、言語学(語用論)

主な業績:

『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社

英語談話表現辞典

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