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地域語の経済と社会 第113回 土佐の『龍馬からの恋文』トイレットペーパー

2010年 8月 21日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第113回 「土佐の『龍馬からの恋文』トイレットペーパー」

 NHKの大河ドラマ『龍馬伝』が大変な人気で、全国各地の坂本龍馬ゆかりの地は歴史ファンや観光客で大変にぎわっていると聞きます。

 関連グッズも続々と登場していますが、そのひとつ、地元・高知では、坂本龍馬からの「恋文(らぶれたー)」を印刷したトイレットペーパーが発売され、話題になっています。

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【写真1 『龍馬からの恋文』】
【写真1 『龍馬からの恋文』】
【写真2 その手紙の文面(一部分)】
【写真2 その手紙の文面(一部分)】

 中国語で「手紙」とはトイレットペーパーのことだというのはよく知られた話ですが、まさに龍馬からの手紙がトイレットペーパーになって登場した、というわけです。

 これを作ったのは、家庭用の紙製品の製造・加工・販売をしている、高知県土佐市の望月製紙です。

 同社によると、NHKの大河ドラマで『龍馬伝』が放送されることが決まった2009年3月、何か龍馬に関するものを開発しようと社内からアイディアを募集。その中から浮かび上がったのが、主力商品の1つであるトイレットペーパーに「龍馬からの手紙(恋文)」を書くことだった由。社の内外に「自分が龍馬になったつもりで「恋文」を書いてください」と呼びかけ、およそ200点ほど集まった応募作の中から、人気投票によって決まったのが、製品化された4作品だったということです。

 2010年1月のドラマの放送開始に合わせて販売を始め、現在、高知県内や龍馬ゆかりの長崎県の観光みやげ品売り場などを中心に販売されており、そのユニークさ、おもしろさもあって、旅の記念に、またプレゼント用などに、人気は上々だとのことです。

 文面は、まず龍馬が「おー 今日も待ちよったぜよ、まあ、ゆっくりしていきや」とトイレで迎え、そのあと利用者へのメッセージがあり、最後は

悩みがあるがか?  悩みがあるのか?
何でもゆーたらえいがよ  何でも言ったらいいよ
ここには誰もおらんき  ここには(他に)誰もいないから
ほんで 後は水に流したら  そして 後は(すべて)水に流したら
えいがやき  いいんだから

と励ます内容の文面4連が、連綿と繰り返されています。参考までに、共通語訳を付けておきます。

 全部を読むと、個室での人生相談の趣きがあります。「恋文」というよりも、龍馬からの「人生の応援歌、処世訓、激励」といったほうがいいでしょうか……?

 この手紙のおおむね2連ごとに点線状の切れ目が入っています。
 そのように、人生の悩みにも適宜ふんぎりをつけ、うまく切り離されたトイレットペーパーといっしょに、不運や憤懣はすっきり水に流して解消できるといいですねぇ……。

《参考》「望月製紙」のホームページは、http://www.soft1010.com/company/index.html を参照。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2010年 8月 21日