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同情表現2―『英語談話表現辞典』覚え書き(42)―

2011年 3月 17日 木曜日 筆者: 内田 聖二

前回は聞いたことや相手がおこなったことなどに同情する気持ちを表す表現をみましたが、今回は相手に残念な気持ち、同情の気持ちを伝える表現を考えてみます。

代表的な表現に shame や pity を使った、‘It’s a shame/pity (that) . . . .’や‘It’s a shame/pity to do . . . .’があります。いずれも it は that 節や to 不定詞以下を受ける形式主語として働きます。本辞典から shame を引用します。

1 〈困惑して〉…は残念だ, 遺憾だ:It’s a shame they filed for bankruptcy and had to sell the place. 彼らが破産申請をして, あの土地を売らなければならなかったのは残念だ 《仕事の先行きを考えて》 It would be a shame to see all these years of work go to waste. ここ何年間もかけてきた仕事が無駄となると残念だろうなあ 《会議の前に》 “Our boss is late again.” “Good grief! It’s a shame for him to be unpunctual.” 「ボスはまた遅刻だよ」「あーあ, 上司が時間を守らないとは困ったものだ」.

次に pity を引用します。(次のようにaが省略されることがありますが、通例不定冠詞を伴います。)

1 …は残念です, 遺憾である:It is pity that you can’t come. あなたが来られないのは残念です Pity you don’t understand me. あなたが理解してくれないのは残念だ.
2 お気の毒です, かわいそうです 《訃報を聞いて》 It is pity that his son died in a traffic accident. 彼の息子さんが交通事故で亡くなったなんてお気の毒です 《悪い結果を聞いて》 It is pity that Elizabeth failed the entrance examination. エリザベスが入試に失敗したなんて, かわいそうだ.

shame の場合も pity もいずれも残念な気持ちや遺憾な気持ちが述べられていますが、必ずしも同義ではありません。その差はそれぞれの語の基本義の差です。shame はもともと恥とか不名誉を表す語で、そういったことから起因する残念な気持ち、遺憾の意を伝える言い方です。たとえば、上の第一例では破産をするのは恥であり不名誉なことです。また、pity は元来憐みの気持ちを表す語であり、その残念な気持ちから生まれる同情の念を伝える語です。pity の語義2がその典型的な使い方になります。

また、よく用いられる言い方に‘What a shame/pity!’があります。この表現はit形式主語構文の強調表現として‘What a shame/pity that . . . .’の形で使われたり、相手のことばを受けて‘What a shame/pity!’単独で用いられます。以下は単独用法です。

1 〈相手の発言や目の前の状況から〉何てひどいこと!, あら大変!:“Joey has broken his new bike.” “What a shame!” 「ジョーイが新しい自転車を壊しちゃったんだって」「何とまあ」 “I had my wallet stolen in the train on the way home yesterday.” “What a shame! But I can lend you some until your pay-day.” 「昨日帰りの電車の中で財布を盗まれたの」「何てひどいこと! でも, 給料日まで少しくらいなら用立てるよ」 《レストランの入り口で》 What a shame! So many people are waiting! 何てことだ! たくさんの人が待っているじゃないか 《冷蔵庫の中を見て》 This meat is stale! What a shame! この肉腐っているわ! 大変!
2 〈同情して〉残念だ, 遺憾だ:“Bill lost his job and had to sell his property.” “What a shame!” 「ビルは失業して家屋敷を手放さなくてはならなかったんだって」「大変だな」.

次例は‘What a shame!’の下囲いからのものです。

《友人を励まして》 “I failed in the job interview again.” “What a pity! But better luck next time.” 「また面接試験に落ちたよ」「それは残念. でも次は大丈夫だよ」 “Her husband died the other day, leaving two small children behind.” “What a pity! I have no words to express my feeling.” 「彼女のご主人は先日2人の小さな子どもを残して亡くなられたのよ」「お気の毒に! 何と言ったらいいか, ことばもないわ」.

たとえば、‘What a shame!’では語義2の例、‘What a pity!’では第2例にそれぞれの基本的な意味の差が顕著にでています。


【筆者プロフィール】
内田聖二(うちだ・せいじ)
奈良女子大学教授
専門は英語学、言語学(語用論)
主な業績:『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)


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2011年 3月 17日