夏の猛暑に日本中がやられてしまった今年も,もうすぐ終わりですね。寒くなってきた最近は,それも懐かしく思われます。
さて,今年最初の記事は,「第81回:ケセン語メッセージ」でした。「ケセン語」とは,,現在の行政区域で,釜石市唐丹(とうに)町・気仙郡住田町・大船渡市・陸前高田市の,岩手県の旧「気仙(けせん)郡」の方言です。大船渡市の医師で方言研究家の山浦玄嗣(やまうらはるつぐ)さんによる呼び方です。
年の結びの今回も,「ケセン語」の記事です。ケセン語で始まり,ケセン語で終わる年となりました。
今回紹介するのは,ケセン語のメモ帳「とびゃっこメモ帳」です。
陸前高田市のタクミ印刷有限会社//www.takumi-in.co.jp/による8種のメモ帳です。1冊100枚綴りです。
方言の使われ方は,以下のとおりです。
[1]8種の各々に,ケセン語の題名が付いていて,表紙には,その題名となった単語を理解するためのストーリーの漫画と共通語訳も添えられています【写真1】(【写真1】をクリックで全8種を表示)。
以下に紹介します。( )内は,表紙に添えられた共通語訳です。その後ろの〔 〕内は,適宜付けた私の解説です。
- 「がふ」(大きい。ぶかぶか。)〔靴がブカブカなど,大きすぎて使いづらい様子〕
- 「おだづなよ」(ふざけるな。)〔相手の言動を否定する表現〕
- 「たんまげたー」(びっくりした。おどろいた。)
- 「おしょしー」(恥ずかしい。)
- 「たねる」(探す。たずねる。)〔「たずねる」からの変化で「たねる」です〕
- 「かっつぐ」(追いつく。)
- 「けなり」(うらやましい。)
- 「かばねやみ」(めんどくさがり屋。めんどうな事。)〔怠け者〕
[2]「たんまげたー」と「おしょしー」を除く6種の表紙の裏には,各々の題名の方言を,表紙とともに解説する1コマ漫画が付いています。【写真2】
[3]表紙の裏に,「あど,こんなのもあんのす。(他に,このようなものもあります)」として,8種各々ごとに,数例のケセン語の単語と共通語訳が出ています。【写真3】
[4]メモ帳の全ページに,[3]のなかから選んだ語例と解説の1コマ漫画が,筆記を妨げないよう,ページの端に薄刷りであしらわれています。【写真4】
このメモ帳は,気仙地区や岩手県内での販売のほか,ネット通信販売も取り扱いがあります。(よろしければ,上のURLで)
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。