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広告の中のタイプライター(22):Bar-Lock No.2

2017年 12月 21日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

タイプライターに魅せられた男たち・補遺

『The Author』1891年1月号

『The Author』1891年1月号
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「Bar-Lock No.2」は、スピロ(Charles Spiro)が発明したダウンストライク式タイプライターで、ニューヨークのコロンビア・タイプライター社が1890年に発売したものです。コロンビア・タイプライター社は、ヨーロッパへの輸出も精力的におこなっていて、上の広告の時点では、ロンドンのタイプ・ライター社を中心とする販売網を展開していました。この頃のコロンビア・タイプライター社の主力製品は、「Bar-Lock No.2」と「Bar-Lock No.3」だったのですが、「Bar-Lock No.3」はプラテンの幅が14インチで、本体幅より長いプラテンを搭載していました。その点を考えると、上の広告は「Bar-Lock No.2」を描いていると思われます。

「Bar-Lock No.2」の特徴は、プラテンの手前に屹立した72本の活字棒(type bar)にあります。活字棒は、それぞれがキーに繋がっていて、キーを押すと、対応する活字棒がプラテンの上面に打ち下ろされます(ダウンストライク式)。プラテンの上面には紙とインクリボンが置かれていて、印字の瞬間には、インクリボンごと活字棒が打ち下ろされるのです。打ち下ろされた活字棒は、バネの力で元の位置に戻ります。すなわち、プラテンの上面で印字がおこなわれるので、オペレータが少し上から覗き込めば、印字された文字が直接見えるのです。

「Bar-Lock No.2」のキーボードは、12字×6列=72字が収録されており、大文字小文字が、全て別々のキーに配置されています。標準のキー配列では、キーボードの最上段は2QWERTYUIO67と、その次の段は3ASDFGHJKL89と、その次の段は45ZXCVBNMP-£と、その次の段は&qwertyuio?;と、その次の段は()asdfghjkl_と、最下段は/’zxcvbnmp,.と並んでいました。数字の「0」は大文字の「O」で、数字の「1」は大文字の「I」で、それぞれ代用することが想定されていたようです。

「Bar-Lock No.2」のプラテン幅は9インチ(23センチメートル)あり、筐体の高さもほぼ9インチです。筐体は全て鉄製で、重さは26ポンド(約12キログラム)もありました。そう考えると、上の広告に描かれている「Bar-Lock No.2」は、実際の大きさに較べると、少し小さ過ぎるように思えます。「Bar-Lock No.2」は、女性一人で持ち運ぶには、かなり重たいタイプライターだったのです。

『Business』1891年10月号

『Business』1891年10月号
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【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。

2017年 12月 21日