『三省堂国語辞典 第六版』が刊行される直前、初めて見本を見て、その洗練されたデザインに魅了されました。並版は明るいオレンジ色、小型版は白色の地で、全体に細かい市松模様の濃淡がついています。高級なお菓子の箱のようでもあります。表題はくっきりと黒い細身のゴシック体。全体の印象をひとことで表現すれば、「モダンでシンプル」です。この装丁は、三省堂デザイン室によるものです。
一般に、国語辞書といえば、重厚、威厳がある、奥が深いというようなイメージを持たれています。そのイメージを踏まえるせいか、多くの国語辞書のデザインは、地味であり、時にはやぼったさを感じさせることもあります。
そうした中で、かつての『新明解国語辞典 第四版』(1989年)の装丁は、新鮮な感じを受けました。箱の隅に、ポップな(斬新でおもしろい)字体で「ShinMeiKai」のロゴを配置してあり、独自の語釈で知られる『新明国』の雰囲気をよく表していました。私はひそかに快哉を叫んだものでした。
今回の『三省堂国語辞典 第六版』も、ぜひ新しさを感じさせるデザインにしてもらえればいいなと、かねて思っていました。はたして、すばらしい装丁でした。CDや本などのデザインが気に入って買うことを「ジャケ買い」と言いますが、ついジャケ買いしたくなる辞書になりました。
実用面から見ると、今回の装丁は、表題などの文字を上のほうに配置してあるため、金文字が手でこすれにくいという長所があります。私を含め、辞書はビニールカバーを取って使うという人は多いでしょうから、こういうデザインはありがたいのです。
外観のことを中心に書きましたが、ページを開いたときに見やすいことも『三国』の特長です。これについては、佐久間孝夫・常務取締役営業局長の説明があります(『全国書店新聞』2008.1.1⇒記事内容はこちらのページの下のほうにあります)。どうやって見やすい紙面にしてあるか、その秘密については、そちらをご覧ください。