肥後の「もっこす」、土佐の「いごっそう」など、それぞれのお土地柄の気質をあらわす方言がありますね。
県域が南北に長い長野県内では、それぞれの地域に特有の方言がある一方で、全県をおおう語もあり、その代表格が「ずく(=骨惜しみせず生産・創造活動に立ち向かう気力・活力)」と言えます。
2000年、NHK教育テレビでは、週1回、都道府県ごとに「ふるさと日本のことば」を放映しました。その番組制作に先立ち、NHK長野放送局では、「二一世紀に残したいふるさと信州のことば」を視聴者から募集しました。1か月あまりの間に2300通を超える便りが寄せられ、その中でもっとも多く取り上げられていたのが「ずく」だったそうです。
「ずく」という語を使うのは、長野県だけではありませんが、
○ずくがある……ちょっとしたことをするにも、よく精を出す
○こずくがある……こまごまとしたことにこまめに精を出す
○ずくやむ……ちょっとしたことにも骨惜しみをする
○ずくなし……無精者
○ずくなしばこ……こたつ
○ずくなしまめ……つるのないささげ
のように、勤勉であることに価値をおき、さまざまな使い方をする例は、ほかにないようです。
方言みやげ・グッズの観点から、「ずく」に関する長野県内の事例を見渡してみると、
①ずくだせ創造局(村おこし組織、上水内郡小川村 1989年)
②ずくなし人形(土産物、大町市:現物未確認)
③こずくまんじゅう(和菓子、上水内郡信濃町・長野市【写真参照】)
などが目に留まりました。
①のようなネーミングに利用される例は、今でも公私を問わずにありそうです。③の商品に添えられたしおりには、次のような説明が書かれています。
「こずく」とは、(中略)物事に立ち向かう気力や活力、根気といった意味を表現する言葉でございます。
小ぶりで上品なおまんじゅうを口にすると、「こずく」が出るような気がしてきます。