キャラクタの「品」と「格」の違いを具体例で示したが(第60回)、格について、なお言いたいことがある。それは、ことばを発するキャラクタの格は、とりあえず4類に大別するとかなりスッキリするということである。(今回はそのうち3つを紹介する。) 前回述べた「感動詞」や「終助詞」の観点だけでなく、「間投助詞」そして「ことばのスタイル」の観点も含めて、このことを示してみよう。
まず『特上』について。おごそかな『神』キャラのように、格が非常に高いキャラクタは、丁寧なスタイルではしゃべらず、ぞんざいなスタイルでしかしゃべらないのが原則である。『神』は「それでよい」などとおごそかに告げるから有難いのであって、『神』が「それでいいです」と言ったらもはや『神』ではないというのはこの原則の一例である。もっとも、『神』は『神』でも『女神』なら「あなたはそれでいいのですよ」のように言えるから、原則はあくまで「原則」に過ぎないが、実はその『女神』は『神』(男神)よりおごそかでなく格が低いのだ、あまり『神』らしくないのだと言ったら読者は驚くか。このあたりは、少し後で述べるキャラクタの「性」の問題なので、ここで詳しくは触れないが、この『女神』が、『(男)神』なら発することのない終助詞「よ」を発しており、それだけ人間くさい位置にあるということぐらいは、いまの段階で指摘しておいてもよいだろう。
『神』よりぐっと低いところに目を移すと『人間』の領域が見えてくる。「それでだな、私がだな」のように、文節末で間投助詞「な」「ね」などを発することができるのも、「行ったよ」「イヤだわ」のように広範な終助詞を自由に発することができるのも、『神』にはない『人間』の特性である。(『神』と『人間』の間には、ゴルゴ13のように、『神』ほどではないが、多くの終助詞・感動詞・間投助詞を発さず感情を出さない、まさに『超人』的なキャラクタが観察できる。ことばを発するキャラクタの格を「とりあえず」4類に大別、と上で述べたのはこうした事情による。)
この『人間』の中で格が高いのが『目上』であり、さらにその下には『目下』がある。したがって、ここで言う『目上』は『特上』を含まない。『神』キャラは『目上』ではない。
あの人は得意先だから、自分はあの人に対しては『目下』として振る舞う。頭を下げて「例の件、どうかよろしくお願いいたします」と言う。だが、こいつは部下だから、自分はこいつには『目上』として振る舞う。肩を叩いて「例の件、君もよろしくな」と言う――こういう『目上』『目下』は「スタイル」変化の範囲におさまる(第4回)。だが、『目上』『目下』がいつもそうなるわけではないのだった。相手に対していったん揉み手をして媚びへつらい、阿諛追従を重ねて『目下』として振る舞ったら、状況が変わっても相手は自分をなかなか『目上』とは認めてくれないのだった(第49回・第50回)。また、相手に対していったん『目上』として振る舞ってしまえば、状況が変わっても『目下』に降りるわけにはいかないということがあるのだった(第51回・第52回)。こういう『目上』『目下』はすべてキャラクタとしての『目上』『目下』であり、今述べているのはまさにこれにあたる。