同じものごとでありながら、日本の東西で表現や語形が違っている例があります。
東の「肉まん」に対して、西の「豚まん」など、以下に類例をあげると、
〈東〉 〈西〉 今川焼 回転焼 Yシャツ カッターシャツ (パーマを)かける あてる
これらに、
がんもどき ひりゅうず(飛竜頭)
を加えることができます。
この「ひりゅうず」(もしくは「ひりょうず」「ひろうす」)ですが、食品事典や国語辞典では、「がんもどき」の関西での言い方と説明しています。
語源をたどれば、ポルトガル語のfilhosにいきあたります。室町末期以後にもたらされた南蛮菓子のひとつで、もち米を練って油で揚げ、砂糖みつに浸したものでしたが、江戸期には、「がんもどき」の別名になったとの由。
という歴史的背景のある食品ですので、関西だけで見られる例かと思いきや、東京の都心で「飛竜頭」を売っているお店があります。
さっそく命名の由来をたずねてみました。
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●「がんもどき」ではなく、「飛竜頭」とした理由は?
そもそも当店では、豆腐類の小売店以前に懐石料理の店を始めております。店頭で商品を売る際、「がんもどき」ではなく「飛龍頭」としたのは、店内でお出しする料理名をそのまま使うことにしたからです。
料理の中で「飛龍頭の○○あん」「○○と飛龍頭の炊き合せ」などはあっても、「がんもどきの○○」というのは、当店だけではなく懐石料理を出すお店ではあまりないようです。(やはり懐石料理や茶懐石自体が関西を中心に広まっていったからでしょうか……?)
料理の流れを受けて「飛龍頭」としたので、豆腐類の小売りのみでしたら「がんもどき」だったかもしれません……。
●発案者は、関西のご出身ですか?
いいえ。
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ということで、方言の活用ではあるものの、古語の再利用という面もあると感じられる例でした。
なお、都内には、関西から来た職人さんが作る「飛竜頭」を売るお店もあり、お店ごとにその由来をたずねてみるのも、おもしろいかもしれません。