(写真はクリックで全体表示)
今,岩手県といえば,NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』です。セリフは,岩手県久慈(くじ)市の小袖(こそで)地区の方言がもとだとされています。各週のタイトルは「おら……」で,ポスターも「オラ,三陸が好きだ」「オラ,この海が好きだ」(2種あり)【写真1】です。なかでも,驚いたときに発せられる「じぇじぇ」が話題になっています。私も,小学館『週刊ポスト』(5月3日・10日号)で少し説明しました。岩手県の驚いたときのことばでは,この連載でも第21回で,盛岡市の「じゃじゃじゃ」を説明しました。
番組が始まって以来,久慈市では,この「じぇじぇ」が多くの観光客を迎えています。三陸鉄道の久慈駅では,海女と「じぇ」の組み合わせの方言メッセージ【写真2】がお客を迎えます。同鉄道車内で発売の方言みやげ(手拭い)は,「じぇじぇ」を中心にデザインされ【写真3】,パッケージに解説が付いています【写真4】。
ここで,「じぇじぇ」について第21回の復習も兼ねて説明します。これは,久慈市のなかでも中心部では使われず,小袖地区だけの方言だと言われています。久慈市出身者に直接確認しました。ただし,同じ岩手県でも遠く離れた(約190km)遠野市の『遠野昔話』にも多くの用例があります。熊谷印刷出版部刊『遠野むかしばなし』全4集(1987~1995)では,全200話のうち32話に38例が認められます。岩手県内では他に,盛岡市で「じゃじゃじゃ」(主に男性。女性は「さささぁ」が多い),宮古市で「ざざざぁ」です。東京では「あっ」また「えっ」などと声を発するだけか,ことばを言わないこともあります。この地方では驚いたときことばを言い,それが各地で異なります。だから,驚きのことばにその地域を端的に表す効果があるわけです。
なお,「じぇ」の回数ですが,今回の題名や『あまちゃん』のHP=//www1.nhk.or.jp/amachan/では2回です。驚きの程度により使い分けます。1回や3回(ドラマ内では8回も)あります。同サイトの「能年玲奈のちょびっとトーク(14)」では「じぇ! じぇじぇ! じぇじぇじぇ!」と,1~3回が並びました。【写真3】の方言手拭いも同様です。『遠野むかしばなし』では1回が6例,2回が32例です。盛岡の「じゃじゃじゃ」「さささぁ」,宮古の「ざざざぁ」は3回が基本ですが,2回や1回もあります。