1970年代、ドリンク剤のテレビコマーシャルで用いられたキーワード「ちかれたびー」。ヒットCMともなったこのコマーシャルは、今日の方言をたのしむ気運のさきがけとも評価できるでしょう。ヒットの背景には、共通語にしてしまうと、抜け落ちてしまう微妙なニュアンスがあることをわかりやすく表現し、そこに方言に対する共感が集まったこともあると思われます。
先日、地元のJR小海線に乗っていたところ、車内広告に「ちかれたびー」の系譜につらなる例を見つけました。
「ごしたいは、こわい?」をキャッチコピーとして、地元の方ならわかる「ごしたい[=疲れた]」をもとに、他地域の類義の方言「こわい」をかけて説明が続きます。長野県内では、他に疲れた時に「てきない」も使いますが、南部の方が主となります。
「ごしたい」によって、PRされているのは、健康補助食品で、感情を表現する形容詞の方言を用いて訴えている点に工夫が見られます。
製品の製造元である王子木材緑化株式会社によると、この「お国ことば中吊り広告」は、次の4種作成されたそうです。
①「ごしたいは、こわい?」……JR小海線
②「こわいは、えらい?」……JR日光線
③「かいだりいは、こわい?」……JR名松線
④「きつかーは、えらい?」……筑豊電気鉄道
お近くの方、ぜひ車内でもご覧ください。列車にゆられながら、広告をながめていると、健康への気づかいが必要だとしみじみ感じられてきます。