図解現代百科辞典
昭和6年(1931)12月1日第1巻刊行/本文432頁
昭和7年(1932)3月25日第2巻刊行/本文488頁
昭和7年(1932)6月20日第3巻刊行/本文454頁
昭和7年(1932)9月25日第4巻刊行/本文476頁
昭和8年(1933)1月15日第5巻刊行/本文552頁
三省堂百科辞書編輯部(代表者斎藤精輔)/菊倍判変形(縦279mm)
本書は『日本百科大辞典』全10巻(明治41年~大正8年)に次ぐ、三省堂における百科事典の第二弾である。装丁は背革・天金。本文にアート紙を使い、1巻あたり500頁前後にすることで本が重くなることを防ぎ、他にはないスリムさが洒落た印象を与える。ただし、昭和10年には、全2巻に変更された。
画期的なのは、書名に「図解」とあるとおり、写真や図をできる限り載せていることだ。ほとんどのページで、紙面の半分は図版が占めている。アート紙を使ったのは、写真を鮮明に見せるためだった。さらに、別刷りのカラー図版もある。
内容見本では、「断然他の追従を許さず」「一見明瞭一読了解『図解と文字の合成』百科」「豪華版の風貌・普及版的廉価・時代を劃する編輯法」と謳っている。
編集のヒントになったのは、イギリスの『I・SEE・ALL』(1928~30年)という10万点もの図版を掲載した百科事典。これは、文字より図版の占める割合が多かった。
本書が『日本百科大辞典』と異なる点は、見出しがすべてカタカナで、仮名遣いは表音式になり、横に小さく歴史的仮名遣いを示したこと。また、長音符号の「ー」は「あ」の前ではなく、読まない方式で配列してある。表音式と長音符号については、『広辞林』(大正14年)からのものだが、和語の見出しまで表音式にしたのは本書が最初だった。
「猫」「犬」の項目を『日本百科大辞典』と比較すると、犬のほうが詳しく書かれていて写真も多いことは変わらないものの、かなり簡潔な記述になっている。とにかく、『日本百科大辞典』は詳細を極めすぎたきらいがあった。そこで、文章を口語体に改め、内容や価格を万人向けにしたのである。
本書の第1巻刊行と同年の11月から、平凡社が『大百科事典』全28巻(昭和6~10年)を刊行し始めている。また、冨山房は『日本家庭大百科事彙』全4巻(昭和2~6年)があり、のちに『国民百科大辞典』全15巻(昭和9~12年)を刊行する。競争相手が次々と現れた時期なのだった。
●最終項目
●「猫」の項目
●「犬」の項目
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